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To be beautiful means to live courteously.

数年来の経営者仲間である素直な力株式会社の代表取締役女将を務める床 美幸氏と、JBIGの野田泰平が、「食事」という観点から人の幸せについて語り合った。

素直な力株式会社 代表取締役女将 味噌ソムリエ
床 美幸

大阪府出身。同志社大学卒、電機メーカーに勤務後、2003年、Web系セミナー&人材サービス会社を創立。2016 年3 月に代表取締役を退任。20代に自ら経験した数回の入院生活に加え、人材サービス事業展開中に痛感した体調不良の人がいかに多いかという現実に触れたことがきっかけとなり、元気の源である健康的な食事を提供し、働く人々を応援していきたいと決意。2016 年3 月、「MISO POTA KYOTO」を開業し、素直な力株式会社 代表取締役に就任。「食べ物から人を元気にしたい」という想いを「みそポタ」を通じて京都から日々発信中。
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株式会社 ペー・ジェー・セー・デー・ジャパン 代表取締役CEO
野田 泰平

1979年福岡県生まれ。2010年に株式会社P.G.C.D. JAPANを設立。「年齢を美しさに変える人」を増やすため、スキンケア・スカルプケアの商品を開発、販売。また、2019年にはホールディングス会社である株式会社JBI GROUPを設立。企業理念『Pay forward』を掲げ、“世界を幸せにする人を増やす”という使命のもと、サスティナブルな商品、サスティナブルな事業を創造し、社会と未来に貢献する。

自分の価値観を軸に世の中に貢献する

仕事を楽しむためには元気を。「食」で体の奥から幸せを。

野田泰平(以下、野田) 実は床さんのお店の客第1号は私だったんですよね(笑)床さんとは経営者仲間として、ずっと親しくさせていただいています。2016年に味噌ポタージュ専門店『MISO POTA KYOTO』をオープンされた時のことをすごく覚えてます。小さなレストランでのオープニングレセプションでの和服姿の床さんがとても印象的で、格好良かった。まずは、なぜMISO POTA KYOTOを起業しようと思ったのか、きっかけはなんだったんでしょうか?

床美幸(以下、床) 野田さんもご存知の通り、前職はウェブ系の人材サービス会社を経営していました。当時は「仕事って楽しい」という人を周りにたくさん増やそうという想いですごく頑張ってたんです。でも、年々体の不調を訴えるスタッフが増えてきて。仕事中の頭痛や腹痛、通勤電車の中で気分が悪くなるといった話を聞くことが多くなって、「仕事は本当に楽しい」って言われるのになんで不健康な人がこんなに増えるんだろうって思ったんですよね。

それで不調の原因をヒアリングしたところ、多くのスタッフがランチを唐揚げやおむすび、お菓子や肉まんだけで済ませてると知りました。身体のことを注意するっていうときにだけサラダをちょっと食べてみるとか。外に食べに行かずに、社内でずっとそんな食生活をしてると聞いて、「食べ物やね」って。やっぱり元気じゃないと仕事は楽しまれへん。そこから、人を健康にする事業をやりたいって思ったんです。

野田 そして社長を退任されて、新規事業を模索し始めたんですね。でも、「食」と言ってもいろいろあります。なぜ「味噌」を選んだんですか?

 周りの人たちから「床ちゃんお味噌汁はほんまにええんやで。毎日朝晩お味噌汁を食べてたら、日本人はそれだけで元気なんやで」と言われたんです。そう言われてみれば昔は朝食と夕食にお味噌汁を食べていたな、と思ってお味噌汁について調べてみたら、今の日本人は40年前の半分くらいしか味噌を摂取していないこと分かりました。昔に比べて、心の病気とか生活習慣病の人が増えているのは、やっぱり現代人の食生活が影響しているのでは?と思ったんです。それで、会社名にも通じるんですけど、「素直な力株式会社」と言うように、周りの方のアドバイスを素直に聞いてきたら素敵な人生になってきたから、このタイミングでたくさんの方からお話も聞いたことやし、お味噌を使って人を健康にする仕事をしようと決意しました。

野田 そうなんですね。それで味噌に着目するようになったんですね。

 最初は、当時の会社の事務所があった東京の青山に味噌汁スタンドを出そうと考えてたんですよ。味噌汁って自分一人分作るのは面倒くさいけど、なんかあると食べたくなるじゃないですか。やる気満々やったんですけど、リサーチをしてみたところ、お味噌汁を食べなくなった理由にたどり着いたんです。

最も大きな理由は、「パンと合わへんから」。なるほど人間パン食べたいんやなって思いました。確かにパンのお供にはスープとかシチューとか選ぶ人が多いですよね。そこで、「パンに合うお味噌汁を作ろう」という方向性を決めました。レーズンパンや、クリームパンなど、様々なパンを持ち込んで試作を重ねました。具材もトマトやビーツなど洋風なものにして試作してみたんですけど、結局お味噌汁はお味噌汁で、ベストマッチとは言えなかったんです。そんな時に、レシピ開発担当の男性料理研究家が、「ミキサーではん拌してみますか?」と提案してくれたんです。

野田 そこからみそポタの構想が始まったんですね。

 若い人のお味噌汁を嫌う理由の中に「地味」やからっていうのがあるんですよ。お味噌汁はだいたい茶色いですから、確かに気持ちが上がらへん。その時たまたまビーツの具材でかく拌してみたらすごい綺麗な色になって、これなら見た目問題はクリアできると思いました。食べてみたら、和食感が減って、よりスープに近い。この方法でさらに試作を重ねて、ようやくみそポタの原型ができました。

野田 床さんがみそポタをやるって決めてから、すごく楽しそうだった。経営者仲間からは経営が軌道に乗るのか心配されていましたよね。「飲食業界初めてでしょ?料理も苦手だし大丈夫?」って。

 そうなの。私自身、自炊とかできなかったからね。

野田 だけど、床さんはめげなかった。やめるっていう気持ちを全然感じなくて、「絶対これだ」と思ってやられてるのが伝わってくるんですよね。「本当に自分がやるべきことを見つけた」って、楽しんでる姿にすごく惹かれました。

床さんが今、あえて昔からある味噌を選んだのは、ずっと素敵なことだと思っていました。私自身、商品である石鹸が本当に大好きで、「P.G.C.D. JAPANの石鹸が絶対に世界を変える」と思っているように、ビジネス的な観点とはまた別の次元で、「自分の価値観を軸に世の中に貢献したい」という床さんの考え方にすごく共感しました。

 正直、大変な世界に飛び込んじゃったなって思ってますが、とても楽しいです。野田さんが「うまい、うまい」って食べてくれるし、お客様からみそポタのパック商品をお見舞いに送ったら、相手の方が「滋養がついた」とか「元気になった」と言ってくれた話を聞くと、やっぱり嬉しい。催事で接客をしていた時に、若い人から「お味噌汁苦手やったけど、これやったら食べられるわ」って言われたことも。やっぱり、子どもの頃からお味噌汁を食べていた人は、お味噌汁を口にすると子どもの頃の幸せな瞬間、幸せな気持ちとかあたたかい気持ちがよみがえるんでしょうね。

みそポタは豊かな人生を送るための価値観の一つ

野田 みそポタを食べたら不調が改善されたっていう話を聞いたことがあるけど、朝食で食べたら、「今日も頑張ろう」って、身体だけじゃなくて心の不調も解決しそうですよね。

 実は、お味噌って未だに解明されてない効果がたくさんあるんです。でも、伝統的な食品だけに分析がなかなか進んでいないのが現状。例えば、煮立たせん方が栄養があるとか言われてるけど、実は煮立たせてみても栄養が残ってる、とかが挙げられるんです。

一説には、戦国武将たちもお味噌汁を戦場で食べてたと言われています。竹筒に詰めて持参して、お湯を沸かせてお味噌をとかし、ご飯にかけて食べてたみたいです。まさしく「武将たちのファストフード」。特に愛知県の八丁味噌は豆味噌で重要なタンパク源を摂取できる上に、日持ちがいいんですよ。だから、東海地方で郷土3英傑※1と呼ばれる戦国武将が活躍したのは、お味噌の力と言っても過言やないと思います。

野田 なるほど。じゃあ、海外の人たちのみそポタに対する反応はどんな感じですか?海外でも、緑茶や抹茶は日本文化として認識されているようだけど、味噌汁はどうですか。

 外国の人たちは、実は日本の味噌汁に対してポジティブなイメージを持ってる人ってあんまりいないんです。「お味噌汁=サービス品」っていうイメージがあると海外の友人から教えていただきました。海外の寿司店などでは、最後にサービス品として提供されることが多いので、日本文化としてのお味噌汁の地位はあまり高くない。あと、インドのカレーやロシアのボルシチみたいに、どの国も家庭料理としてのスープが必ずあるから、「お味噌汁は日本人が好きな海藻などが入った家庭のもの」っていう考えもあるんやと思います。ただ、ポタージュになると新鮮に映るのか、トマトやとうもろこし、ビーツのみそポタは外国の人にも人気です。

野田 私は、もっと多くの人にみそポタを食べてほしいと思ってます。もっと多くの人に食べてもらうために、床さんが越えなければいけない壁ってなんだと考えてますか?

 2つありますね。

まず1つ目は、みそポタに食べなれてもらうこと。基本的に人の味覚ってコンサバなんですよね。好きな味、知ってる味しか受け入れられない。特に男性はこの傾向が強いと思います。だから、食べ慣れてもらうことが、まず大事なんやなって思います。

野田 確かに男性は特にそうかもしれない。でも、味噌汁でさえ食べ慣れないんですか?

 「みそポタ」と「味噌汁」はまた違うから。「これはなんだろう」って目新しさが勝るんですよね。MISO POTA KYOTOのオンラインストアのデータを分析すると、5回以上食べてくださった方は継続的に召し上がる傾向にありますので、これが鍵だと思っています。

野田 なるほど。もう一つの理由は?

 2つ目は価格です。お味噌汁のフリーズドライって、スーパーとかだと80円、70円とかで売ってるのを見ますよね。でも、うちは化学的なものを入れずに野菜も豊富に使ってみそポタを作っていますので、市場のインスタント味噌汁よりどうしても高価になります。でも、お客様から見えない部分だから、どうやって価値を伝えていくのかが難しいんです。お客様の中には「すごく美味しいパンを買って、御馳走として食べてる」っておしゃってくださって、週1、2回の「ごちそう」として召し上がっていただくのも嬉しいんですけど、もうちょっと日常的に食べてもらいたいと思ってます。そのためには、企業努力でどうやったら価格を少しでも下げられるかなと考えているところです。

野田 でも、安いものが欲しいわけではない人もいるじゃないですか。安い価格でしか売れないなって思っていると、結局自分たちで自分たちの価値を下げてしまうことになると思うんだけど、どうしたら安価な味噌汁とは別のものにできると考えてますか?

 まずは数を増やすことを考えています。

あと、今、若い人に向けて「困ったとき用に持っといて」っていう話をしてます。夜遅くに帰宅したときや体調が悪いときに食べて、体の反応を知ってほしいって伝えてます。プチ不調のときに飲んで、頭痛が和らいだという声もあって、「薬代わりになるよ」と紹介してくださった人もいるんです。素材にこだわるお母さんには、お子様のおやつとしてご紹介することもありますね。

野田 空腹を満たすためではなく、自分の人生を豊かにするためにみそポタを飲みましょうということですよね。

 そういうことです。

野田 私たちの事業も同じで、石鹸もコンビニやスーパーで100円とかで売ってるんです。それに対して、私たちの石鹸は一つ9,000円します。でも、私たちのお客様は石鹸を持ちながらなんとも言えない笑顔で「これ私の体の一部なんですよ」って言ってくださるんです。お客様は9,000円の石鹸を単なる顔を洗う道具ではなく、朝と夜の心のオンとオフのスイッチにして毎日の習慣の一つだと思ってくださっているんですよね。

 すごく素敵ですね。

野田 みそポタも石鹸も、香るじゃないですか。みそポタは、香りだけでもう美味しい。その上で飲むことで、体の中にじゅわ〜っと入ってきて、最高な気持ちになる。だから、みそポタは香りを楽しんで、味わいながらいただいてるので、自分の身体を作っている、細胞を作っているみたいに体中に染み渡っていく感じがします。みそポタのお客様が香りをかいだり、最後の一滴まで丁寧に飲まれてるのが目に浮かびますよね。

 美味しさに浸ってくださってるんですね。

野田 だから、健康でいることも、余計なものを採らないことも、豊かな人生を送るための一つの価値観ですよね。

※1 郷土3英傑:織田信長、豊臣秀吉、徳川家康のこと

「美しい人」は生き方が美しい

「丁寧な暮らし」への憧れから見えた価値観

野田 今日、床さんが対談前に少し早くきてくださって、お店をきれいにして待っていてくださいましたよね。みそポタを作っている時の床さんの仕草とか所作、表情全てがとても素敵でした。手間をかけてくださっているのが伝わってきて、それだけで美味しいと思うし、愛情が詰まっているのが感じられました。そういう部分も含めて、床さんはとても美しい人だと思っています。

 ありがとうございます。すごく嬉しいです。

野田 私たちの企業の成果に「年齢を美しさに変える人を増やす」というものがあるのですが、床さんにとって「美しい人」の定義ってどんな人でしょうか。

 そうですね。パーツではなく、纏う空気感ですかね。

野田 その空気感ってどうやってできるものなのでしょうか。

 ありきたりだけど、内面が出ると思うんです。丁寧な暮らしから育まれた、豊かな心を持っている人が美しい人。私自身、内面を豊かにすることの大切さを知ったから、そういう人たちの美しさが、ごまかされることなくわかるようになったんだと思います。ひょっとしたらバブル時代の私が、今の私がきれいだと思う人を見ても、きれいだと思わないかもしれない。そういう意味では、昔の私も今の私もお互い様かもしれないけど…。でも、丁寧に暮らしている人って、見ただけでわかりませんか?

野田 わかります。でも、美しい人は誰かという問いに対して、丁寧に暮らしている人という答えは一瞬違うように思いますが、実はすごく核心をついていることなんだと思います。丁寧に暮らせるということは、実は何かを諦めてたりとか、少し窮屈だったりとか、決して自由ではないんですよね。習慣になるとそれは普通になるんですけど。だから、そうではない人からすると、丁寧な暮らしは自由ではないし、大変そうに見えるのではないでしょうか。コンビニエンスな食事の方が楽だし簡単だけど、丁寧な暮らしは簡単じゃないじゃないかって。

床さんはどういうきっかけで丁寧な生き方がいいなとか、美しいなという考えを持たれるようになったんですか?

 起業する時にお味噌がいいとアドバイスしてくださった方の中に体操教室の先生がいらっしゃったんです。レッスンを夜に受ける時、レッスンの間に先生が食事を作ってくれるんです。炊いた酵素玄米と具沢山の味噌汁とお香物を用意してくれて、「ごめんね。うちほんといつも茶色くて。華やかじゃないんだけど。でも、今日も体操してるからこれだけ食べて、家に帰ったらお風呂に入って寝ちゃって。」って言って。

野田 すごく素敵ですね。

 だから、夜にわざわざレッスンを入れて、ご飯を食べさせていただくこともあったんです(笑)帰るときの満ち足りた気持ちがすごく良くて。だから、その先生が私の丁寧に暮らす師匠なの。

野田 丁寧師匠がいらっしゃったんですね。でも、どうして丁寧な暮らしがいいと感じられるようになったんですか?

 多分、自分の真逆にある生活だったからだと思います。

東京に住んでいた時は、バブル時代を引きずるかのように毎日外食して、派手なご飯を食べていたんです。でも、体操教室の先生に「ほんとごめん茶色くて。でも、これよく噛んで食べて。ひと口入れたら30回噛むんだよ」って言ってもらいながら、味噌汁と玄米ご飯とお香物を食べると、翌日本当に調子がいいんです。昼にレッスンに行くとおやつを出してくださって、すごく忙しい方なのに「気分転換にちょっと作ってみた」って言うのが、すごく素敵な暮らし方だと思って…。私もこうなりたいなって思って、先生に「どうやったら料理上手になりますか?」って聞いたら、「床ちゃんでも具沢山味噌汁だったら失敗しないから、安心して」っておっしゃってくださったんです。「味噌汁の場合は大体、具の大きさが違ってもいいし、切り方がおかしくてもいいし、お味噌ってすごい調味料だから、不味くは作れないからね」って言われて、なるほどなと思いました。だから、MISO POTA KYOTOは皆さんの出会いから生まれてるんです。

最近、先生は忙しくなりすぎて、娘さんの食事を作れない時にみそポタを食べてくださってるってお伺いしました。「床ちゃん、みそポタすごくいいよ!作れる日は作るんだけど、レッスンとレッスンの間が15分しかなかったら無理じゃんね。そういう時すごく役立つのよ。もうほんとこういうのを待ってたよ。」って。今、師匠を助けることができてよかったって、すごく嬉しく思います。

野田 その先生のご飯にも愛がいっぱい詰まっていたんですね。P.G.C.D. JAPANの石鹸を作ってくれている人たちも、たくさんの愛を詰めてくださっています。最初、出来立ての石鹸って温かくて柔らかいので、力強く触るとグニュって形が変わってしまいます。だから、手袋をして、一つ一つ丁寧に並べて、大体3週間ぐらい寝かすと温度が冷えていって固まっていくんです。温かい時はあまり匂いがしないんですけど、冷えていくと匂いをグーっと閉じ込めて、P.G.C.D. JAPANの石鹸の香りになってくれるんです。フランスの工場の方々が本当に丁寧に扱ってくださっていて。機械で大量生産されている感じではなく、ちゃんと生モノを丁寧に扱っている姿がすごく好きなんです。

でも、お客様から、ワンプッシュで泡が出てくる洗顔料がほしいという意見をいただいたことがありますが、私たちが販売しているのは洗顔用洗顔ではなく、「美しくなる習慣」。石鹸を手に取り、朝、晩に1日を想いながら自分の手で丁寧に泡立てて洗顔するからこそ得られるもの、自分に手間をかけることの豊かさを体験してほしいと思っています。

 利便性の高いワンプッシュボトルだと、インスタント味噌汁と同じになってしまいますね。

最近、若い知人が「自分のことを大切にする方法が分からない」と言うので「まず、いいものを食べよう。それだけで自分を大切にしてることになるんよ」と伝えました。

豪華でなくていいから、豊な気持ちになれるもの、体を作ってくれるようないいものを食べることを大切にしましょうと、たくさんの人に伝えたい。

野田 「人を良くする事」って書いて「食事」っていうんですよね。だから、食事って人を良くする事じゃないといけないんです。床さんが若い人たちに対して自分を大事にするんだったら、あたたかいものを体に入れなさいよ、一手間かけなさいよってお話をされていることって、床さん自身「人を良くする事」の食事をしようよという話しをされていると思ってすごく感動して共感しました。僕たち日本人が大事にしている「生きる」というテーマって、きっとそういうことがすごく大切なんですよね。

経験を積み重ねたからこその幸せ

野田 今は女将として店を切り盛りされていますが、実は床さんは、バブル景気の頃に大学を卒業され、得意の英語を活かして、大手企業で海外を担当していましたよね。食も含め華やかな生活も経験されたはずなのに、なぜ今、味噌という伝統食品に戻ってきたのでしょう?

 東京にいたときは外食が多かったし、有名店に行くこともありました。友人たちと集うのが楽しかったですしね。でも、誤解を恐れずに言うと、有名店も何回か行くうちに慣れてきて、感動しなくなってしまって。あるとき、ふと「大金を払ってまで、日常的に食べなきゃいけないものじゃないよね」と思ったんです。MISO POTA KYOTOを始めてからは、お味噌汁からひらめきを得ることが増えました。そろそろ桜えびが出てきたな、山菜の季節だわ、とか考えると、日常の中ですごくわくわくして幸せを感じます。

野田 今日、床さんに色々とお伺いしたいことや確かめたいことがあったんです。私はここ数年で、床さんのものの選び方が変わってきたと感じていました。

幸福論の一つに、「幸福=財産/欲望」と分数で表す考え方があります。例えば、車や高級品がほしい、贅沢したいというバブル時代の幸せは分子を大きくしていく幸せ。一方で、欲望を減らす、つまり「足るを知る」ということは分母を減らすことで得られる幸せです。床さんは年齢を重ねるにつれ、後者の幸せに近づいているのかな、たくさんいろんなものを見て聞いて知っているからこそ「足るを知る」という方向の「みそポタ」なのかなと、私は思っているのですが、いかがでしょうか。

 そうですね。今の方が楽しいし、幸せです。でも、バブル景気のあの頃を経験して気付いたことがあるからこそ、以前より自分の内面が豊かにする大切さがわかるようになったと感じてます。さっきもお話ししたように、私の中で「美しさ」の定義が変わって、丁寧に暮らしている人をより美しいと思うようになりました。その人の内面からにじみ出る空気感、オーラから伝わる美をようやく自分でも分かるようになったかなって…。

実は私、みそポタの味を好きって言う人は、見た目でわかるんです。催事とかで味見を出す時に、美味しいって言う人は、毛艶でわかります。女性でも男性でも毛艶がツルッとしてる、そういう方に渡したら、「これめっちゃ新しくて美味しいね」って言うてくれるんです。舌の味覚は1日では作られないものだし、その人の舌が毛艶とか健康を作っているわけだから、見た目がそうなるのはよくわかるなって思います。きれいな人ほどみそポタ好き率が高い。

野田 なるほど。私たちも毎月洗顔サロンを開いて、お客様をお呼びしているんですけど、お客様こちらですっていうご案内する係をすると絶対わかりますもんね。200m、300m先から、「あ、私たちのお客様がいらっしゃった」っていうのが。雰囲気、選ばれる洋服なのかもしれないですが、それは決して豪華なものではないんです。「美しいもの=高価なもの」ではなくて、生きることを大切にしている人たちの美しさみたいなものではないでしょうか。

 幸せかどうかって表情にも出るんですよね。表情の柔らかさとか、ギスギスした感じが出ないというんですかね。

野田 そうかもしれませんね。今日お話をしていて、お互いに「美しい人を作る」事業をしているんだと思いました。私たちP.G.C.D. JAPANはスキンケアやスカルプケアを通して外見から中身をきれいにしていって、床さんのMISO POTA KYOTOは食べて内から外をきれいにしていく。アプローチは違うけれど、きれいな人、美しい人を作っているのかな、と。

私たちの会社も常に目標を掲げていますが、MISO POTA KYOTO、みそポタは今後どのような目標をもってらっしゃいますか?

 まずは、もっと手軽に色んなところで召し上がっていただけるように、デリバリーを拡充しようかと思っています。Uber Eatsも登録してますが、ゴーストレストランもおこなってみたいと考えています。周りの仲間にもやりたいって言ってくださる人がいるので。デリバリーが始まると、皆さんにもっと気軽に召し上がっていただきやすくなるので、日本ではそんな形で頑張っていきたいと思っています。

あと、お味噌って体に良いので、スタイルは崩さずに、ぜひ世界にも進出したいと思っています。

野田 どこを目標にされているんですか?

 スイスです。実はコロナウイルスが拡大する前にスイスからお問い合わせがあったんです。だから、アメリカの前にスイスに進出したいなと考えています。みそポタってお味噌汁というだけではなくて、野菜もかく拌されているでしょう。だから、野菜を通常の固形物のまま食べるよりも吸収がいいんですよ。日本の人たちだけではなくて、海外の人たちにも「みそポタは最強の食べ物なんだ」って伝えたいんです。

野田 ずっと応援してます。本当にみそポタっていう事業は「本物」の事業だと思ってて、20代では起業できない、年齢を重ねたからこその事業だと思っています。だから、少し羨ましい時があります。もちろん私たちの事業も本物だと思ってます。でも、食の中でも味噌汁、味噌を扱っているっていうところが、何千年も続いている文化を新しい形で、本当に美味しいものをお客様にお届けしているというのが、本当に素敵だと思うし、本当に羨ましいです。

 そこまで言ってくれるなんて嬉しいです。頑張ります。

野田 ファンですから。これからもずっと応援してます!

 ありがとうございます!

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