WHAT JBIG? WHY JBIG?
P.G.C.D.JAPAN がブランド創立20周年を迎えた2019年。P.G.C.D.ブランドは、アイテムもコンセプトも一切変えることなく、すべてをそのまま受け継ぎながら“ Japan Beauty Innovation”を掲げてホールディングス化することとなりました。
これを記念して、経営者同士として親交を温めるとともに、世界的な起業家ネットワーク『EO Tokyo』※においてESG(Environment Social Governance)の推進に取り組む、末松弥奈子氏と、P.G.C.D.JAPAN 代表の野田泰平の対談を企画致しました。
末松氏は、ニューズ・ツー・ユーホールディングス代表であり、日本で最も歴史のある英字新聞社ジャパンタイムズ会長。「女性経営者としてはもちろん、世界に開く日本の窓として、日本を世界に向けて発信する活動をされていたので、実際にお目にかかる前から注目していました」と語る野田。一方末松氏は「最初野田さんの商品への想いを聞いて、凄いなと衝撃を受けました。20世紀生まれの会社として、あるべき姿、理想論で会社を経営している人だなと感じています」とかなり強い印象を受けたとか。そんな末松氏に、ホールディングス経営の先輩として、環境問題に造詣の深い女性経営者として、ジャパンタイムズで日本を世界に発信するメディアの長として、今回のホールディングス化はどう映ったのか?話はお互いのホールディングス化への切っ掛けから始まり、これからの企業はどうあるべきかにまで広がり、2時間近くもの対談となりました。この対談から、私たちの『JBIG』設立への想いを感じていただければと思います。
※【EO:Entrepreneurs’ Organization】1987年に設立された世界的な起業家ネットワーク。現在は58カ国、13,000名以上のメンバーで構成されており、日本支部にあたるEO JAPAN は6 チャプター、500名を越える会員で構成され、その中でもEO Tokyoは世界でトップ規模を誇る支部になっている。
どうして、JBIGをつくったんですか。
ホールディングスの目的は「持続性」。
野田泰平(以下野田):末松さんはホールディングス経営の先輩ですが、どうしてホールディングス化しようと思ったんですか?
末松弥奈子氏(以下末松):私が最初に会社を設立したのは、インターネット黎明期。性善説で始めたんですけど、フェイクニュースやステルスマーケティングが次々に登場して「自分だけが得をすればいい」みたいな世界になってしまって、すごくがっかりしてたんですね。「本来思っていた世界と違うな」「これは何が原因なんだっけ」と長期的に考えるきっかけが、ホールディングス化でした。
野田:ジャパンタイムズとの出会いが先ではなかったんですね。
末松:後です。『News2u』という企業の情報発信を支援するサービスを行ってきましたが、1つの会社だとどうしても目の前のビジネスを追いかけてしまうので、一歩下がって「清く、正しく、美しい」インターネットを考えるためにホールディングス化したんです。野田さんはどうして『JBIG』をつくったんですか?
野田:一言でいうとサスティナブル(持続可能)な事業にしていくためです。いま日本企業の平均寿命が平均23年なんですよ。それを考えると、もっとサスティナブルな企業にしていかなければいけないと考えたんです。事業を永く続けていく間には、浮き沈みがあるかもしれない。工場が火事になって半年間商品を作れなくなるかもしれない。そんな時、1 つの事業だけだと立ち直れないかもしれない。
末松:そうですよね。
野田:この先ずっとお客様に安定して商品をお届けして行くには、社会状況や経済状況に影響されることなく、企業が安定していることがとても大切です。グループだったら何かあった時にいくつものブランドが助け合うことで、さまざまな影響を受け止めることができる。建築で例えれば、衝撃に耐える『耐震設計』ではなく、衝撃を拡散して受け止める『免震設計』。だから核となる大事なものを守りながら、しなやかに変化する必要があると思っています。
本質を変えないための、JBIG。
野田: P.G.C.D.の原点は、かつて琵琶湖が生活排水で汚染されていたというニュースなんです。汚染水の中には化粧品も含まれていて「人を美しくするものが地球を汚している」ことに疑問を感じたから。だから私たちは、創立以来ずっと石鹸にこだわってきました。石鹸なら容器も要らない。ゴミも出ない。余計なものを配合しなくていい。ところで、いま日本人が使用しているスキンケアアイテムは平均どのくらいだと思いますか?8つもあるんです。
末松:そんなに?
野田:アイテムも使う時間も増え続けているんです。世の中はどんどん進化しているはずなのに、どうして物が増え続けるのだろうと思っていて。
末松:なるほど。
野田:つくるエネルギー、使うエネルギー、捨てるエネルギー、汚した水をキレイにするエネルギー。いろいろなものに負荷がかかっている。それならば少しでも物は少ない方がいいのにと思っています。だから私たちは「究極のシンプル」を目指しているんです。
末松: 「あるべき論」「問題意識」を持って成功している会社って、あまりないと思うんですよ。「儲かりそう」とか「トレンドだから」とか会社を持続するためにいろいろ変えていくじゃないですか。時代に合わせることも大切ですけど、本質をキープしていくためにはホールディンクス化して未来のことを考える場は必要だと思いますよ。
「Japan Beauty Innovation」とは何ですか?
日本人の考え方が人類の資産になる。
末松: 「究極のシンプル」って茶道に通じるものがありますね。
野田:私たちのホールディングス名である『Japan Beauty Innovation』が指している“日本の美”は、侘寂だと思っているんです。かつてジャポニズムが欧州を席巻して美術に大きな変革をもたらしたように、侘寂のような価値観が世界中に広がれば、いま世界中で問題になっている社会的課題も解決できるのではないかと。
末松:極侘ってご存知ですか?
野田:極侘?
末松:侘寂のその先。人間は地球の中に存在する一つでしかない、という考え方です。広島の神石高原という自然の中に学校をつくったんですが、都会から来た子供たちは「虫がいるので寝られません」と怖がるんです。「虫の方があなたを怖がっているのよ」と言っているんですけど、こういう共棲の感覚って凄く大事だと思うんです。海外には「お天道様が見てる」という感覚はないんですよね。日本では森羅万象すべてに神様が宿っている。日々の生活の中で、贅沢をしない、無駄をなくそうという感覚は、こういう所から来ているのではないかしら。日本は島国だから、限られた資源や物資の中でどうしたらサスティナブルに生きていけるか、という感覚を持っているんです。
野田:この日本人特有の感覚や価値観はもっと誇りに持っていいと思うし、「侘寂」のような考え方がこれからの世界には必要だと思うんです。いまのアメリカ人と同じ生活を人類全員がやったとすると、地球が4.5個必要になるそうなんです。でも日本人的価値観で生活すれば、そんな状況はもっと改善できると思うんです。
末松:日本人はそういうことを発信していくことが上手くないんですよね。日本の里山資本主義を世界に発信する『Japan Times Satoyama 推進コンソーシアム』を設立したんですが、里山の人たちからすると当たり前で「なんでわざわざそんなことを言わなきゃいけないの?」ということでも、それを知らない人たちにとっては驚きなんですよね。でも日常の中だと、その価値を客観的に説明できないので、私たちが客観的に伝えて世界に発信しているんです。ベースにあるのは自然との共棲・地球との共棲。この部分では日本の方が進んでいるかもしれません。ひょっとしたら人類の資産となるような、考え方や行動の一つかもしれないなと思って取り組んでいるんです。
出来たことより、やろうとすること。
野田:いま日本の企業がESGやSDGs※など、環境問題や社会問題に取り組む姿勢をアピールするようになっていますが、本業ではないところで“ちょっといいことしよう”というのは違うと思うんですよ。ど真ん中の事業そのものが、社会的課題を解決するものでないと、これからの事業はダメなんじゃないかと。
末松:日本は本来「三方良し」のような考え方を当たり前にしてきていると思うんですよ。いまやっと日本人的価値観が欧米に認められようとしてきたのに、ESGやADGssなどの国際ルールや方向性づくりで先を越されてしまったんです。日本人は10の内、9をやっていても1できていないと「ウチはまだまだできていませんから」と言ってしまう。でも欧米は1しかできていなくても10やろうとしていれば、「10やります」といってしまう。だから発信が苦手な日本企業は逆に「何もできていない」というレッテルを貼られてしまっているのがとても残念なんです。
※【ESG・SDGsとは】ESGは環境(Environment)、社会(Social)、ガバ ナンス(Governance)の頭文字。企業の 長期的な成長にはこの3つの観点が必要 だという考え方。SDGsは、2015年の国連サミットで採択された、国連加盟193カ国が2030年までに達成するために掲げた持続可能な開発目標(SustainableDevelopmentGoals)。17の目標と169のターゲットが設定されており、政府・企業・市民社会に全世界的な行動を要請しています。
これから、どんな風に変わっていくのですか?
“Pay forward”は“恩送り”
野田:『JBIG』のフィロソフィーとして “ Pay forward ”を掲げているんです。過去にPay back するのではなくて、私たちが受け継いだ恩を未来のために送っていけるような事業。
末松:恩送りですね。誰かから受けた恩を、自分は別の人に送って、送られた人がさらに別の人に渡して「恩」を世の中に回していく。
野田:そうなんです。
末松:「恩送り」や「情けは人のためならず」っていう考え方は、古くから日本に定着しているものですものね。
野田:私たちの事業が、自分たちだけを幸せにするのではなく、次に生まれてくる人たちに対してもいい物・いい環境を残していけるものにしていかなければいけないなと。だからグループとして「世界を幸せにする人を増やす」ことを使命にしています。私たちのお客様たちが、もっともっと世界をいい方向にしてくれたなら、もっと影響は大きくなるよね。ということを考えて、「世界の人を幸せにする」のでなくこの言葉を選びました。
末松:素敵ですね!
野田:社会的責任は「人も地球も美しく」。成果は「究極のシンプル」。技術がこれだけ進化しているにも関わらず、ものが増え続けているいまの社会に一石を投じたいと思って。本当に残るもの、そして本当に質の高いものを私たちの成果にしたいんです。これまで無かったものをつくるのが、私たちの仕事じゃないですか。だからものづくりにすごく時間がかかるし、実際、固形石鹸でシャンプーをつくるのに4年かかりました。本質を突いていかないとサスティナブルな事業はできないはずなんです。
末松:野田さんの商品づくりの話を聞いていると、“共感力”という言葉を凄く感じますね。商品を通じてお客様と価値観を共有している、という関係を築いているんですね。
会社は、透明性が求められる時代へ。
末松:昔は大量生産、大量流通、大量消費が正しいと思われていましたが、これだけルールが変わって「前は大丈夫だったけど、今はダメだよね」となってきています。これからは、しがらみがなく、正論でビジネスをしていく時代だと思うんですよ。透明性なんて、50年前にはほとんどなかった。でもこれからお客様の期待に応えられる企業は、我々の目の前で生まれるところから成長していくところまで、その姿を見せられる企業じゃないでしょうか。
野田:ご覧のように、私の執務室はガラス張りなんです。普段からお客様がいらっしゃると、見えるし、見られるように。顔の見えないブランドの経営者って気持ち悪いと思っているんです。レストランのオープンキッチンで目の前で料理をつくってくれるように、通信販売だからこそ何を考えてものをつくっているのかを、感じられるようにしていきたいですね。
末松:野田さんは常に正論で向き合ってるなと感じます。新しい会社だからできる世の中との関わり方があると思うので、これまで通りの生き方を貫いていただければと思います。
野田:ありがとうございます!
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