【ART PROJECT with P.G.C.D.特別企画】アート対談[パート3]日本のアートを救え!~エクラで繋ぐ次世代のアーティスト
アートを通して自分の美的価値観を発見し、新しい自分に出会うP.G.C.D.のプロジェクト『ART PROJECT with P.G.C.D.』。
現在「ロシオン エクラ ニュー エラ」をご購入いただくごとに、東京藝術大学美術学部 油画第六研究室の学生へ画材を寄付するという「エクラ アートエイド」というキャンペーンを開催しています。
今回は、実際に研究室へ伺い、学生たちがどんな思いで作品に取り組んでいるのか、また将来への展望などを語っていただきました。
未来を担う若きアーティストたち
野田 泰平(以下、野田)
それでは、東京藝大の油画第六研究室の皆様です。
盧 曦航(ロ キコウ)君から、まず自己紹介をお願いします。
盧
盧 曦航(ロ キコウ)と申します。中国からの留学生です。六研(第六研究室)の油画修士の2年生です。
今行っている主な研究は、「イメージと物語性に関しての研究」です。よろしくお願いします。
小久保
油画第六研究室の修士1年の小久保タクミといいます。
普段、ペインティングを主にやっていて、ざっくり言うと実在性とか存在みたいなものを、うまく新しい視点で捉えられないかなということをテーマにしています。
絵画以外にもインスタレーションとか彫刻みたいなことにも、タイミングがあればチャレンジしたりもしています。よろしくお願いします。
フカミ
油画第六研究室修士1年のフカミエリと申します。
普段は、私はこれからペインティングを主に制作していて、ずっと人間を描いていて、自分のその身体を通して普段から見ている日常だったりとか、その時に感じているリアリティだったりとかを描きながら。
それと最近は神話、古事記やギリシャ神話を勉強しながら、「日本人である私とは何なのか」ということも考えながら制作しています。よろしくお願いします。
内野
東京藝術大学修士1年の内野です。
僕は何を描くかというよりかは、どう描くかというのが興味があって、最近では状況とか環境とか場とかというのがキャンバスにして、そこに作品を描いていくことをしています。卒業制作では実際の紙を薄く削って、そこに絵を描いて作品を作りました。
野田
今、私たちは「エクラ アートエイド」キャンペーンを行っています。1リットル出荷するごとに、画材を10ミリリットル寄付する取り組みです。
そのプレゼント先が、この油画第六研究室の皆さん。作家活動に何か役立ててもらいたいと思っています。
実際、油画を描くのは大変です。一般の人たちは「普通に絵を描くだけでしょ?そんなに絵の具がいる?」って思うかもしれません。
それぞれがどういう絵の具の使い方をして、そこでどんな思いで、油画の道具と向き合っているのか、自分の考え方をシェアしてください。
小久保
自分はそんなに大量に絵の具を使うわけではないのですけれど、それでも大きい作品になると、意外と気づかないうちにすぐ無くなってしまいます。
油絵なので基本的には「絵の具」と「オイル」と「筆」がだいたいの画材です。オイルは少量でも何千円とするので、すぐ無くなったりとか。
絵の具などは特に発色が良いものや貴重な顔料だと、少ない量でも「え?そんなにするの?」というものを使うので、かなり画材に関してはお金がかかっているなと思います。
個性とこだわりのある色の作り方
野田
さっき薄久保先生も言っていましたが宝石みたいなものなんですよ。
それこそ絵の具の素材から考えると本当にレアなものもあるし、色を自分で作られたりする人もいるから、そうすると混ぜ合わせて作ったりするので。
小久保君は色は自分で作る?それとも絵の具素材のままの色で?
小久保
そうですね。チューブを使うのですけど、大体そのまま使うってことがあまりないので、何色か混色をして使っています。
野田
自分の良い色ってどうやって作るのですか?
小久保
絵にもよりますが、色んな絵の具をいっぱい混ぜていくと発色が悪くなったりとか、鈍く見えたりとかするので、ある程度色数を抑えたりとか、同じような系統の色を使ったりとかして。
中に、たまに発色の高い絵の具をちょっと入れてあげると、綺麗に色が出てくるんですよ。
野田
なんか料理みたいだね(笑)。ちょっといい具材を入れて、味が変わってくるみたいな。隠し味にいいやつを使うのかな。なるほど。ありがとうございます。
では、盧君はどんな画材を使ったりとか、画材へのこだわりとかもありますか?
盧
自分もそんなに大量に使っているわけではないです。レイヤーとレイヤーを重ねて薄く塗ってますから。
でも、この絵の背景のような時には、黄色をいっぱい使ってます。大きな1本のチューブを使い切ります。
色に関して混ぜ方とか、多分小久保さんと同じパターンで、ちょっと鈍く見える灰色っぽいものや、ちょっと鮮やかな色を入れて、視覚の中心というか…その点にめちゃめちゃ良い色があったなぁという作り方が気に入っています。
野田
それって最初からその色をイメージして組み合わせながらそこに近づけていくのか、それとも混ぜながらイメージの色を作っていくのか、どっち?
盧
一部分の色を想定して混ぜて塗ったら、他の周りの色の相性が良いかなと考えながら少しずつ調整します。
野田
へえ、面白いな。
フカミさんはどんな画材を使われているのか、画材のこだわりを教えてもらっていいですか?
フカミ
私はすごいその、画材大好きで。
野田
画材大好き!(笑)画材マニア!
フカミ
そうですね。
私、制作は結構短くて、1日とか2日で最近描いているのですけど、一番時間がかかっているのがその支持体(絵の具を支えるもの)、キャンバスです。
まず、パネルに貼ってから「目止め」をするんですよ。目止めというのは、キャンバスが布なので目と目の間を埋めてあげないと絵の具が垂れて、裏側に透けてしまう。
目止めを3、4層、その後に下地を3層塗って、全部で7層くらい塗っていて、支持体にすごく時間がかかっています。
野田
絵の具で描いているもののシートの上には、そんな7層も載っているってことですか?
フカミ
はい、7層。その後に紙ヤスリを買ってきて、紙ヤスリも意外と高くて1枚100円とか150円とかするんですよ。
私、線を引いて描くので、キャンバスがザラザラしているとボソボソとした線になってしまうんです。
フラットな状態にしてスッと線が引けるような支持体にします。
すごく画材も好きなので、「クサカベ」(画材メーカー)だったら赤系と黄色系、「マツダスーパー」(画材メーカー)だったらビリジャンがいいなとか、いろいろ。
最近好きなのは「油一〈YUICHI〉」(ユイチ)という油絵の具です。藝大のオリジナルブランドなんですけど、それがすごく彩度が高くて、画面が濁ったなって思った時でも「油一〈YUICHI〉」の赤とか、黄色を使えば彩度が戻ってくるので気に入っています。
オイルも、普通のテレピン油(油絵の具の薄め液)は「クサカベ」、それ以外の光沢があるものとか、黄変しないオイルを前塗り用に使ったりとか、用途に合わせてメーカーも選んで買っています。
野田
さっきフカミさんの、絵の具道具が入っているバッグを見せてもらったら、「え?この箱の中だけでも20万円くらい?えー!」みたいな絵の具キットがあったけど、やっぱり数を描いていこうと思うと、すごい勢いで無くなるんでしょう?
どれくらいの頻度で買い足すのですか?
フカミ
週イチで、新宿にある「世界堂」っていう画材屋さんに行くんですけど。
野田
週イチで行くの?(笑)みんなも?結構な頻度だね。(笑)
フカミ
筆とかも、ボソボソしてきたら細い線が描けなくなるんで。
私は「名村大成堂」の高い筆が好きなので、この細い緑の筆がいいなって思って買い足したりとかしていますね。
野田
まるで、仕入れだね。
内野君はどうなんですか?画材と、絵の具へのこだわりを教えてもらえますか?
内野
僕は結構大量に使うタイプです。
卒業制作展とかでは、2メートル×3メートルの作品を作ったんですけど、僕は絵の具だけを使って、紙みたいなのものを作ってて。
野田
絵の具のプールを作っているみたいな感じだよね。薄くね。
内野
シールの台紙みたいなツルツルな面に、メディウム(絵の具に混ぜる添加剤)という材料と、顔料という材料を混ぜて、それを薄く伸ばしてからペリペリとはがして、被膜みたいなものを作って、それを最後、紙に壁紙のように貼っていく。
この時に使う絵の具の量が5リットルとかでもう絵の具の量だけで言ったらすごいんですよ。
野田
偶然的なシワとか模様とかもあるし、色も絵の具だけの色なんだろうけど、見え方も全然変わるんですよね。
どうやって発見するの?
内野
あれは色で言うと単色の中でも不透明の透明色というのがあって、僕が使っているのは半透明で裏の色も透けて色が濁って積層になるように…混ぜて見えるみたいに。僕はそうやって自分の色を探しています。
野田
固まる時間とかどうやって調べるの?全部自分で調べている?
内野
そうです。塗って乾くまで待って、乾いたら剥がして…年単位で(笑)
野田
年単位で!(笑)
学生たちが抱える現在進行形の悩みとは
野田
学生さん達ってポテンシャルのタマゴだと思うんですけど、そのポテンシャルを引き出すためには作品をどれだけ多く作っていくかもそうだし、いっぱい失敗していける環境っていうのがすごく大事かな。
でも、画材もタダじゃないし、毎年結構値上がりもするみたいな話を聞くけど、どうですか?
小久保
ここ数年ぐらいでだいぶ変わったなっていうふうに思っていて。
紙にしても、絵の具にしても、筆にしても、国内で作ってるものや海外から輸入しているものもあるので、値上がりをかなり感じてます。
野田
でもケチってもね、作品に影響しちゃうからね。練習しないといけないわけでしょ。
小久保
新しい試みをして上手くいかないこともあるし、実は、失敗の数の方が表に出してる作品より多い。
野田
それはそうだよね。
大学側は一年間にこれくらいとか画材を提供してくれたりもしない?
小久保
全くない。自分たちの制作なので。
野田
少しね、応援してくれてもいいよね。
自分ごとなんだけど僕も元々建築デザインをやっていたので、トレーシングペーパーとか図面を引いたりするような紙にもこだわりがありました。
みんなCAD(製図を行うツール)なのに紙が大好きで、最終的に紙にスケッチしたり、図面に落としたりして。
あの微妙な、紙のザラザラとサラサラとの微妙な違いで筆の滑りが違って、好みも分かれてみたいなのが、僕の時代の建築の頃ではありました。
今日、伺った絵の具の中にも、筆の走り目とかが違うというのも確かにあるんだろうなと思っています。
これからの夢・将来の展望は?
野田
これから自分たちが、この大学院生活を通して学びながら、どういうアーティストになっていきたいと思っているのか、将来の自分の展望や夢を最後にそれぞれ聞かせてください。また展示会もあれば教えてください。
内野
僕は、「環境」とか「場」を主体とした作品を作っていく中で、もう少し場を拡張する…。
例えば、「この部屋である必要があるのか」、「この部屋から脱出して大きい規模感、壮大な部分に向けてのスケール」を作品としたり、建築とかを学んで作品と「場」というものに重きを置いて作品を作っていけたらなと思っています。
僕は、卒業制作展で三菱賞を受賞したので、9月の末、30日から丸の内で受賞者の展示があって、そこで展覧会をやろうと思っています。
丸ビル1階の「マルキューブ」というところでやります。
フカミ
私は、チャレンジし続けられる作家になりたいなと思って大学院に入りました。
チャレンジしていれば、自分の個性というものが残っていくものだと思っています。ずっと動いていけるような絵が描ける作家でありたいなと思います。
今、金沢でグループ展をやっていまして、市営の「ASTER Curetor Museum(アスターキュレーターミュージアム)」というところで、10月までです。ぜひお越しください。
「抽象とか、具象とか、ときどき歴史 - F collectionを中心として 」
| ASTER Curator Museum (aster-g.com)
盧
今、2年生だから来年1月の卒展(卒業・修了作品展)のためにたくさんのシリーズを作りたくて。
やるとしたら、この時代だからこそ見つけられる、新しい絵画の可能性をもっと見つけたいです。
小久保
自分の制作テーマが、実在性とか存在みたいな部分なんですけど、絵画以外にもいろいろなアプローチでどんどん試していきたいなと思っています。
もちろん絵画をベースにしながら、枠組みにとらわれずに作品を見せていけたらいいと、ずっと思っています。
9月の半ばから10月まで、「GINZA SIX(銀座シックス)」6階の「銀座 蔦屋書店」にあるスペースで、小さく個展という形で作品を何点か並べる機会があります。
野田
「エクラ アートエイド」キャンペーンは、9月末までやってます。
未来の日本を世界に伝える立派なアーティストのタマゴがたくさんここにいますので、インスタなど見てもらえたらなと思います。
時間があれば展示会に行っていただければと思いますし、今回寄付する画材で描いた作品のアフターレポートして皆さんにお伝えできたらなとも思っています。
ぜひ、たくさん使ってたくさん描いてくださいね。
盧、小久保、フカミ、内野
ありがとうございます!
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