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【1月開催の展覧会】アーティスト大和美緒氏に迫る!呼吸すること、光を見ること、作品の誕生秘話を大公開

【ART PROJECT with P.G.C.D.特別企画】
Respect the Artist大和 美緒×P.G.C.D.代表 野田 泰平[前編]

アートを通して自分の美的価値観を発見し、新しい自分に出会うP.G.C.D.の新プロジェクト『ART PROJECT with P.G.C.D.』。
第2回目となる1月のアート展覧会にご参加いただくのは、アーティストの大和 美緒 氏です。

現代アートの醍醐味はまさに同じ時代の今を生きているアーティストの生の声を聞きながら、作品の鑑賞ができるところ。
展覧会に先立ち行われた今回の対談では、株式会社大林組のご協力のもと、大林組の大阪本店の新事務所壁面に制作された大和氏の実際の作品「RED DOT/ 13.8 billion years」をバックに、作品の誕生秘話や想いを語っていただきました。

■対談参加者プロフィール
Respect the Artist
大和 美緒
1990年滋賀生まれ。2015年京都造形芸術大学大学院総合造形領域修了。
油彩による点の集積やインクによる線の束などから構成されるRepetitionシリーズを発展させる。純然とした動作の繰り返しの果てに立ち現れる画面は有機的で、時間の経過を内包しながら、自然の有り様やシステムと、人間の身体や感性との関わり合いを可視化する。
主な展覧会に「KYOTO STEAM 2020」 京都市京セラ美術館 (2020) 、「project N」東京オペラシティーアートギャラリー(2019)など。

株式会社 ペー・ジェー・セー・デー・ジャパン
代表取締役CEO
野田 泰平
1979年福岡県生まれ。2010年に株式会社P.G.C.D. JAPANを設立。「年齢を美しさに変える人」を増やすため、スキンケア・スカルプケアの商品を開発、販売。また、2019年にはホールディングス会社である株式会社JBI GROUPを設立。企業理念『Pay forward』を掲げ、“世界を幸せにする人を増やす”という使命のもと、サスティナブルな商品、サスティナブルな事業を創造し、社会と未来に貢献する。

大林組の大阪新事務所壁面に制作された「RED DOT/ 13.8 billion years」

大きな自然に身をゆだねる感覚を形に。

野田 泰平(以下、野田)
今日はまさに、まだオープンしていない大林組さんの新事務所で大和さんとの対談をやらせていただくことになりました。
大和さんの作品をバックにしながら、お話を伺えるのを楽しみにしていました。今日はよろしくお願いいたします。

大和 美緒(以下、大和)
よろしくお願いします。

野田
最初なんですけど、せっかくなので後ろに描いてある作品「RED DOT/13.8 billion years」について。
ここで10日間かけて描いていたって話を伺ったんですが、この作品の説明から入っていただけると嬉しいです。

(株)大林組の大阪本店の新事務所の壁面にある大和氏の作品「RED DOT/ 13.8 billion years」

大和
この作品は、この空間に大きな自然環境と私達ひとりひとりの存在をテーマにつくれないかと思って制作しました。
今年の3月と4月にメキシコにレジデンスに行っていたんですが、太平洋の大きな波とジャングルがあるような、自然がとても豊かなところで6週間を過ごしてきました。
普段私たちの生活では触れることのない、豊かで大きな自然に感覚を委ねたときに肌に感じる心地よい風とか音とか、そういうものに身を委ねる心地よさみたいな感覚をかたちにできないかなと思って構想しました。

作品誕生のヒントは『苔』!?
自分のルーツと向き合いながら辿り着いた「RED DOT」シリーズ

野田
「RED DOT」のシリーズの技法というか手法で絵を描き始めたきっかけってどういったものだったんですか。

大和
この手法を初めて作品にできたのが、私が大学院を卒業する卒業展のときだったんですね。
私達にとって大学院卒業展って、作家としてのデビュー戦のようなもの。でも、学生時代は自分がどういう表現をしたいのかずっと模索をしていて。
試しては違う、試しては違うみたいなことを繰り返しながら探していく中で、自分のルーツに一回向き合ってみようと思って。

私、母の実家が滋賀県で蘭農園を営んでいるんですね。50年くらいやっている結構古い蘭農園なんですけど、そこで滋賀県という環境に南米から持ってきた蘭の品種が温室の中にたくさんあるという場所にいて。
そういうところで植物たちが育つ時間軸とか、そこから私たちが感じる美しさとか、エネルギーとか、小さい頃から触れてきたことをテーマに作品を作り続けられるんじゃないかなって思ったのがきっかけです。

蘭農園は古いので、いたるところに苔が生えているんですね。
植木鉢に苔が生えていてよく観察したときに、この小さな緑色の点々が自分たちの育成条件の良い方向に向かって1つずつ育っていくことで形が作られているのを感じて、それをそのまま自分の体や感覚を使って体験できないかなと思って始めたのが「RED DOT」の1作目です。

野田
ちなみに、なんで赤という色を選んだんですか。

大和
こういう理由っていうのはなくて、手法だけ決めた状態で、とにかく画材屋さんに行って沢山種類のある絵の具の前に立って、もし自分が一生一色だけしか選べないとしたらどんな色を選ぶかと思って。切実な気持ちで選んだ色なんですよね。

作品制作に使うのはケーキの絞り袋!?
細密なドットの集合で描かれる「RED DOT」が表現するもの

野田
「RED DOT」は筆?それとも特別な道具で作っているんですか。
 
大和
これは絵の具を絞り出して描いていて、お菓子作りのときに柔らかいチョコや生クリームとかに使う絞り袋に絵の具を詰めて描いています。
平たく描いたりとか丸い粒みたいに描いたり、南天の実みたいに丸く立体的に描いたりすることができます。
いろんな方が見てきたものとかそういう感覚が引き出されるような作品になったらいいなと思いながら作っていきました。

絵の具を絞り出して描かれた「RED DOT」

野田
ケーキの絞り袋でつくるというのは最初から?それとも試行錯誤して行きついたんですか。

大和
試行錯誤ですね。最初は機械油をさすプラスチックのケースに入れて描いていたんですけど、例えば一日8時間とか十何時間とか仕事をするときに、プラスチックのケースは硬いんですね。なので、すごい疲れる。
この袋だったら柔らかくできるかなとか、いろんなもの実験しながら。
いろんな描き方を試しながら今の手法に至っています。

この作品は「RED DOT」の“138億年”というタイトルをつけています。138億年という数字は天文学の領域からみた宇宙が始まった瞬間から今に至るまでの時間の経過の数字を表わしています。
大きな時間の流れのなかで、繰り広げられてきた生命と物質の営みについて想像できる作品になればいいなと思っています。

弱さのデザインから生まれた日本らしさと、大和氏の作品の共通点。

野田
僕はもともと建築をやっていたんですが、いろんなデザインや建築の先生に従事してお話ししたときに、日本のデザインは『弱さのデザイン』だって仰っていたんですよね。
障子や襖といった紙一枚を壁と捉えるような、繊細なかすれとか揺らぎとか、そういう言葉から日本のデザインが生まれていて、日本の文化が生まれる背景もその中にあったという話なんですが。

まさに大和さんの作品も、揺らぎであったり、かすれ、赤の色や大きさの強弱があったりして、すごく日本人っぽいなと。
それがやっぱり大和さんのDNA、ご実家の蘭の農園から感じられたものから出来上がったという話を聞いて、納得もしました。

大和
みんなそれぞれのルーツがあって、自然に滲み出るものが作品になっていたりして。他の作家も多分そうしていると思っているんですけれど、自分もそういうのに向き合うのが楽しいですし、他の方のお話を伺うのもいいなって思います。

生命として活動して生きる営みそのものを表現。作品制作に込める想い。

野田
作品をどういうジャンルや手法で描き分けているんですか。

大和
まず、何が各シリーズの根源的なテーマになっているかというと、人が生きることそのもの。生命として活動して生きる営みそのものを作品にできないかと思っていて、それを「RED DOT」というシリーズ、「BLACK LINE」や 「BREATH」というシリーズで表現しています。

生きることそのものをテーマに作品をつくりたいなって思って、でも生きることそのものってあまりに大きなテーマで漠然としていてよくわからないので、テーマに分けて表現できることとして作っています。

呼吸の力で描く作品「BREATH」

大和
(P.G.C.D.で今、限定パッケージとして登場している)「BREATH」という作品が生まれたのは、2019年にコロナ禍になって緊急事態宣言が出たとき。

私達みんな一斉に経験したことのない、病気にかかるかもしれない、自分も死んでしまうかもしれないし、これから生活がどうなってしまうかもわからないみたいなときに、私も同じように不安で、いろんな状況に晒されている中で、何か新しい表現ができないかと思って生まれてきた作品です。
今この瞬間にしか描けない瞬間の連続が痕跡になって作品になっていくという…。

野田
去年ものすごく大きい「BREATH」の作品を出されていましたよね。
シャボン玉じゃないけど、ひとつひとつ膨らませて描いていて、すごい大変な作業だと驚いたのを覚えています。

大和
格闘ですね。作品との格闘です。

1月開催の展覧会「呼吸する星」への想い

「呼吸する星」。それは、私たち自身。

野田
今回、大和さんがP.G.C.D.で展覧会を開いていただくということで、本当にありがとうございます。
1月からの展覧会ではこれから活躍していく人たちを紹介できるような個展にしていきたいなと思っていますので、最初のアーティストさんが大和さんで嬉しいです。
今回の展覧会のテーマで「呼吸する星」を選んだのはどういう思いからでしょうか。

大和
「呼吸する星」っていうのは、私や野田さんや皆さん自身のことなんです。
今からすごく昔に遡って宇宙にまだなにもなかった、真っ暗な宇宙のときに、まばゆい光が出てきて銀河が生まれて、銀河から星が生まれて、星が終焉と共に爆発して、それが太陽系になって地球になって、私達のはじまりである生命になって…。
物質と生命の長い時間の営みの先、今ここに私達がいて、いろんな環境があって。

この世界に存在する全てのものは遡っていくと、星が爆発した時の“かけら”からできているということになると思っていて、それで呼吸している私達の存在を「呼吸する星」というタイトルにできないかと思いました。

野田
私たち自身も星だし、この存在も空間も星だし、この環境自体も星かもしれないし…。いろんな捉え方をされているんですね。

大和
すべてのものが独立して存在しているわけではなくて、お互いふるさとが同じで相互に関係しあいながら長い時間をかけて今存在しているということを考えています。

1月開催の展覧会や冬のキャンペーンで触れられる2作品について

野田
今回「BREATH」という作品と「SPECTRUM DOT」という作品をP.G.C.D.の期間限定パッケージに選んでいただいていますが、「SPECTRUM DOT」のシリーズは、どういう思いでつくられているんですか。

P.G.C.D.の期間限定パッケージにも使われている「SPECTRUM DOT」

大和
「SPECTRUM DOT」のシリーズは、太陽光のスペクトラムっていうものがあるんですけど、私達が普段見ている光って虹色の階調の中から、いろんな色の粒(波)を目で捉えて見ているんですね。そのことを知ったときに、ものを見ている原理そのものをテーマに作品にできないかなと思って作ったシリーズです。

野田
どうやって描いているんですか。

大和
あれは最初にドットの構成を決めて、色のグラデーション、色のスペクトラムを作っていって、最後に透明な樹脂というか透明な絵具を何層も重ねていくと水玉みたいなものになります。

オイラー、機械油をさすもので、ゆっくりゆっくり、おいていくみたいなことで平たい面をだしています。
筆だとどうしてもハケの跡とかでちゃったりするので、それはちょっとずつみたいな。

野田
すごい時間がかかっていますよね。

大和
そうですね。一層やるのに一日作業の時間がかかって、乾くのに2日待って、また一層塗るのに一日みたいな。中途半端に乾かしちゃうと白く濁るので、気長に。

野田
すごい、生で見られるのが楽しみです。
ぜひ皆さんにも来ていただければ大和さんの作品をぜひ楽しみにしてください。

大和
ぜひよろしくお願いします。


ご自身のルーツと向き合い、手法の試行錯誤を経て生み出された大和氏の作品。呼吸すること、光を見ること、普段何気なく過ごしている私たちの営みについて新たな視点で考えるヒントをもらえそうです。
展覧会にお越しの上、ぜひ生で大和氏の作品から放たれるエネルギーを感じていただけたら幸いです。

後半は、「現代アートの楽しみ方」や「大和氏の今後の活動について」伺っていきます。

【撮影協力】株式会社大林組

展覧会開催情報

ART PROJECT with P.G.C.D.
Respect the Artist
大和 美緒

「呼吸する星」

期間: 2023年1月14日(土)〜3月31日(金)まで
場所: JBIG meets art gallery
107-0062 東京都港区南青山 7-4-2 アトリウム青山
※完全予約制・入場無料
<ご予約はこちら> 

作品の制作過程をご覧いただける大和氏のアトリエ訪問レポートはこちら▼

P.G.C.D.公式サイトはこちら▼