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アートは心を映す鏡のようなもの。アーティスト大和 美緒氏の作品をつくる『美』と『習慣』。

【ART PROJECT with P.G.C.D.特別企画】
Respect the Artist大和 美緒×P.G.C.D.代表 野田 泰平[後編]

現代アートと聞くと漠然と『よくわからない』『見方が分からない』、そんな難しさが浮かびます。でも、作品の裏に流れるアーティストの考えや制作秘話を知ると、作品は温度と彩りを帯びてぐんと近くなるはず。
 
現在、P.G.C.D.の南青山にある本社併設アートギャラリーで開催中のアート展覧会「呼吸する星」。展覧会開催前に行ったアーティストの大和 美緒 氏とP.G.C.D.代表 野田 泰平との対談、後編です。
二人が考える『アートの楽しみ方』や『美しさ』『習慣』についてじっくりと語り合っていただきました。

■対談参加者プロフィール
Respect the Artist
大和 美緒
1990年滋賀生まれ。2015年京都造形芸術大学大学院総合造形領域修了。
油彩による点の集積やインクによる線の束などから構成されるRepetitionシリーズを発展させる。純然とした動作の繰り返しの果てに立ち現れる画面は有機的で、時間の経過を内包しながら、自然の有り様やシステムと、人間の身体や感性との関わり合いを可視化する。
主な展覧会に「KYOTO STEAM 2020」 京都市京セラ美術館 (2020) 、「project N」東京オペラシティーアートギャラリー(2019)など。

株式会社 ペー・ジェー・セー・デー・ジャパン
代表取締役CEO
野田 泰平
1979年福岡県生まれ。2010年に株式会社P.G.C.D. JAPANを設立。「年齢を美しさに変える人」を増やすため、スキンケア・スカルプケアの商品を開発、販売。また、2019年にはホールディングス会社である株式会社JBI GROUPを設立。企業理念『Pay forward』を掲げ、“世界を幸せにする人を増やす”という使命のもと、サスティナブルな商品、サスティナブルな事業を創造し、社会と未来に貢献する。

好きな服を選ぶように、自分の好奇心に従って。
アーティストとスキンケアメーカーP.G.C.D.代表が考える『アートの楽しみ方』

『三方良し』の関係をデザインしたい。P.G.C.D.代表 野田のJBIG meets Art galleryにかける想い。

野田 泰平(以下、野田)
前編に引き続き、大林組さんの新事務所にある大和さんの作品「RED DOT/ 13.8 billion years」をバックにお届けします。
僕がギャラリーをはじめたきっかけというのが、一つはアーティストさんをもっと知ってもらいたい、応援したいという気持ち。
もうひとつは≪僕たちという起業・ブランド≫がいて、≪アーティストさん≫がいて、≪お客様≫がいらっしゃる。この三角形をデザインして、何か世の中に対して貢献できることはないだろうかという想い。
『三方良し』としてみんながそこに価値を見出してくれたらいいなと思っています。
 
ただ、アートというテーマで僕たちのお客様にお話を伺うと、『アートの見方が分からない』『アートを買うのが怖い』というような声があるんですよね。
 
前回(2022年)展覧会を開催してくださった竹村 京さんは『自分の美意識をアートというものは発見することができる。自分の感性で、自分の美しさであったり、自分のセンスを発見することができる。怖がらずに自分の鏡だと思ってアートを楽しむのが良いよ』と素敵な言葉をおっしゃってくれました。
 
大和さん流にアートを説明するならば、どんな言葉で伝えられますか?

作品は心の鏡のようなもの。アーティスト 大和 美緒氏とP.G.C.D.代表 野田が考える『アートの楽しみ方』

大和 美緒(以下、大和)
今日、私も竹村 京さんがお話されていたような話をしようと持ってきました。例えば、一番最初は自分が好きな服を選んだり、お気に入りのコスメを選んだりとかそういう感覚で作品をたくさん見ていったら良いと思っていて。
 
たくさん作品を見た時に、この色が好き、この形がなにか気になるとか、うまく言葉にできないけれど、なにか自分の感覚にひっかかるものがもしあったら、そこからどういうところが好きなのかとか、そういうことを深めて考えていくといいと思います。
 
考えることって、自分の経験とか見てきたものが引き出しになって感じられることだと思うので、『作品は心の鏡のようなもの』だと私も思っているんですね。自分の好奇心がまず第一歩にあっていいものなんじゃないかなと思っています。
 
私もそういう風にいろんな作家の作品を楽しんでいて、森美術館の館長の片岡真実さんが『世界中の作品を見ることって地球の上を歩いているような感覚になる』って仰っていて、それって本当に素敵なことだと思っていて。
 
作品っていろんなバックグラウンドをもったいろんな世代の人たちが作っているので、一つの作品を読み解いていくと、例えば日本の生まれの作家で、母の実家が蘭農園で、弱さのデザインが根付く文化がある国に生まれ育ってみたいなことを知ることができたりとか、いろんな楽しみ方ができると思うんですよね。
 
正しい見方っていうのはなくて、まず自分の好奇心に合うかどうかと、そこから気になる作品がどうやって作られていったのかを知ると、よりいろんなことを知ることができるんじゃないかと思っています。
 
野田さんはどういう風に現代アートを楽しんでいらっしゃいますか?
 
野田
いくつか楽しみ方を自分で持っていて、一つは現代アートの見方って『過去・現在・未来』が一緒に見られるのがすごい楽しいなと思っています。
過去のアーティストの方たちは、生前作品を語ることなどをされていなければ生の声を聞くことができないし、過去の作品の中で変化の歴史はあるけどそれはもう終わってしまっているもの。
 
現代アートのアーティストさんは、まさに今を生きられているわけじゃないですか。その今の中でなんとか自分のモノを生み出そうとされている。さらに直接お話できたり、生の声を聞ける機会もある。
 
それに加えてさっき教えてもらったようなこの作品の『最初の一歩』で過去の作品を、またこれが来年再来年、5年10年経ったときに、この作品がどう変わっていくのかと、大和さんの未来の作品をこうやって眺めることができる。アーティストさんの『過去・現在・未来』が応援できる、見られるというのが僕の現代アートの楽しみ方です。
 
もう一つは、やっぱり『美しさ』っていうのがあります。
僕たちはP.G.C.D.という化粧品のブランドをやっていますが、僕が感じているのは『美』というのは相対的な美しさではなく、絶対的な美しさで、誰かと比較する美ではなく『わたしはわたし』という、『わたし』というものをどれだけ大切にしながら良い意味で変化させていけるのかというのがすごく大事だなと思っていて。
 
お客様にも誰かと比較した自分の美しさではなく、お客様の本当の美しさを磨いていただきたいなと。
 
アートでも、僕なりの美しさというものを探していて。あまり写真に映らないことだけれど、アートをコレクションすることによって自分の美しさの価値観や考え方の変わっていないところと、変わっているところが分かって、自分の中の『過去・現在・未来』が見えるのかなって。コレクションさせてもらう中でいうと、自分の今の美しさの定義みたいなものを探そうと思って、選んでいます。
 
大和
素敵ですね。こうして同じ時代に生きていて、実際にお話をしながら、関わり合いながら作っていけるというのが、すごく楽しいですね。
 
野田
楽しいですね。僕も幸せです。
大和さんの考える美しさ、美っていうものはどういうものですか?



時間とともに生まれる美しさを見つめて。
大和 美緒氏のアートの世界とP.G.C.D.が大切にする『美しさ』の共通点

自分に与えられた人生を生き抜くための希望
大和氏が考える『美しさ』とは。

大和
美しさに対して、私はすごい執着があるなと思っていまして。
自分で作品をつくるときに美しいものを作りたいって思うんです。
 
でもそれはキラキラしていてきれいとか、すべすべしてきれいとかそういうことではなく、いろんな美しさがあると思います。
 
例えば、ブルーハーツはドブネズミみたいな美しさについて歌っていたりしますが、私が思う美しさ、今感じている美しさをそのまま作品にしたいという想いがすごく強くて、もしそれができたら、それが心の鏡のようにいろんな人に共感して頂けたりとか、共鳴できるような作品を作りたいと思っているんですね。
そういうことを原動力に作品を作って生きているので、自分に与えられた人生を生き抜くための私にとっての希望だなと思ってるんですね、美しさって。
 
表面的なイメージだけではなくて、長い時間で培われてきた必然的なものに美しさを感じていて。そういうことを自分の身体とか感覚を使いながら作品にしていきたいなと思っています。

時間がかかって作られる美しさ。
フランスでも共感を得たP.G.C.D.の考える『美しさ』とは。

野田
この前、フランスで現地の女性たちにP.G.C.D.の石鹼を使っていただくサロンを行ってきました。その際に、日本の侘び寂びの話をさせていただいたんですよね。特に僕は、『寂び』の、朽ちていく美が大好きで。
朽ちていくからこそ、寂びていけるから美しいと思える心が日本の美意識だと思っています。
 
富士山も、日本で一番高い山が日本で一番美しくて、その両立を目指してP.G.C.D.は社章に富士山の等高線を選んでいるんですけど、あれだって何万回の噴火を経てあの美しい形ができているわけですよね。
 
時間がかかって作られる美こそ、本当のその人の美だと思っていて、エイジングはアンチではない、その人の幸せなホープフルエイジングというか。
まさにフランスも歴史の文化だから、そういうことを思っていると伝えると、すごい共感してくださいました。
大和さんとも話を伺っていて時間軸の話に通じるものがあると感じます。
 
大和
嬉しいですね。本質的なものの美しさを同じところで感じているなと思います。石鹸を愛用させていただいているんですけど、今日もファンデーションを塗らずに。
 
人が持っているバランスを整えることで最小限の力で美しさをつくっていけるっていうのが、コンセプトを聞いた時に最初共感して、愛用させて頂いています。本当に心地よく過ごせているので。
 
野田
嬉しいです。ありがとうございます。
石鹸ってゼロになるのが素晴らしいと思っていて。石鹸って未完成なプロダクトで、手で泡を立てて完成形の商品なんですよね。
泡立ては心と対話している時間で、ルーティンの中でつくる美しさがあると思っています。大和さんの中で大切にしている習慣はありますか?

『習慣』が美しさをつくっていく。
壮大でエネルギッシュな作品づくりを支えるルーティン

大和氏が大切にしている『習慣』とは?

大和
しっかり寝て、しっかり美味しいものを食べてという基礎体力づくりみたいなことは大事にしています。
 
作品をつくるって1日でできないことで、構想から制作して展示して発表するまでに色んなプロセスと長い時間がかかるんですね。
 
途中で疲れてしまうと展示まで緊張感を持った状態でいけないので、この中をどう集中して持っていくかというのに、1日の中の起きる時間や仕事をする時間、ちょっと運動する時間、寝る時間とか、何を食べていくかとか、みたいなことは、大きい作品を作るときや展覧会のときには習慣づけてやっています。
 
野田
『よく寝てよく食べて』はすごく大事ですよね。
結局、肌をきれいにしたくても同じで、それを化粧品やメイクで隠すのはもっと肌荒れに繋がるわけで。大和さんは笑顔が素敵だといつも思っているんですけど、笑えるのもしっかり食べているからで、それが根本的な一番大切なルーティンだと思います。
 
大和
そうですね、何がいいかとか判断できなくなる。美しいものをつくりたいと思っても、何が美しいものなのか決められなくなりますからね。

(株)大林組の大阪本店の新事務所の壁面にある大和氏の作品「RED DOT/ 13.8 billion years」

大和
この作品(大和氏の作品「RED DOT/ 13.8 billion years」)を作るときにはアトリエで原画をつくってそれを描きにくるんですけど、原画を描いている期間も原画だけに集中できる訳ではなくて、色々な調整をしながら描いていて。
 
朝5時に起きてアトリエに言って6時前くらいから制作をしだして、午前中は制作する時間を確保して、午後からは色んな打ち合わせをして、みたいな。
そんな感じのルーティンを1ヶ月、2ヶ月…。
 
野田
この作品の構想を作るのに2ヶ月くらいかかっているんですか?
 
大和
そうですね、かかりましたね。
こういうイメージをつくりたいっていうのは、例えば肌にあたる心地よい風をどうやったら形にできるかということなので、全然わからないんですね、最初。
 
それがどういうことなのかを、ひとつ点を描くことで一歩踏み出せて、ふたつみっつと進めていくことで少しずつその感覚に近づいていけるんですね。
なので、どこまでいけると完成なのかも全くわからない中でやっていて…。
 
野田
この作品(「RED DOT/ 13.8 billion years」)の終わりは、自分でもう押すところがないなという感覚があるんですか?
 
大和
そうですね、これ以上は手が入らないというか、純粋に書きすぎると重くなるんですね。使っている色と素材もあるのでいっぱい描くと怖くなっていくんです。
 
でもそういう感覚をつくりたいと思っている訳ではなくて、その心地よさや美しさみたいなものをちょうど良いバランスはどこかっていうのを、こうやって画面をずっと睨みながら。
 
描いている時間よりも見ている時間のほうが長いほどずっと見ていて。この感覚ってどういうことなのかなって言葉でも説明できないし、どうやったら形にできるのかなっていうことを手探りで掘り出していっているような感じです。
 
野田
でも、自分の中ではメキシコの景色や感覚があるから、それと対比しながらイメージと合わせているんですか?

 
大和
はい、あの感覚がこれで表現できているのかっていうのを何回も自分に聞いて。

作家として、時代を超えて色んな人も感覚に届く作品を。
アーティスト 大和 美緒氏の未来へのまなざし。

未来に向けた大和氏のビジョンとは?

野田
もう一つ聞きたいのは、『過去・現在・未来』の『未来』の話。大和さんがこれからチャレンジしたいこと、新しい構想や、未来に向けてのテーマがあれば教えてもらえますか。
 
大和
私は環境と人の身体、そして感覚が溶け合っていくような作品を作りたいなと思っています。なので、このシリーズをもっと色んなところで作りたいなと思っているし、もっと大きい作品も作りたいです。
 
2022年秋に京都であったACK(Art Collaboration Kyoto)というアートフェアのサテライト展に出たのですが、京都の建仁寺両足院で新しい作品を発表しました。

大和美緒「土は囁く」
「Center-Empty ー中空の行方ー」2022、建仁寺両足院、京都

これくらいの陶器を薄く伸ばして、300枚くらいを高温で焼き締めてお寺の空間に吊ったんですね。
 
風が吹くとこのドットが動いて、重なり合ったりしてそれぞれ音が鳴ります。それが300枚くらいあるので、いろんな階調の音が一斉に鳴るという、風が吹くことを肌ではなく、肌と目と耳で感じるという作品が一つできたので、それをもっといろんな環境と関わっていくように作っていきたいなということを。
 
野田
自然の中に、その場所に溶けこむようなアートをイメージされているんですか?
 
大和
そうですね、私の表現ではなくてここの場所にどう関わるのかっていうのを無理なく、私なりの自然な感覚でできたらいいなと思っています。
作家として、時代を超えて色んな人の感覚に届く作品をつくりたいなと思っているので。
 
野田
頑張ってください。みなさんも大和さんをぜひ応援していってほしいなと思います。本日はどうもありがとうございました。


自分が好きな服を選ぶように、自分の好奇心から始めると気軽にいつでも作品を楽しめる気がしますね。日々のスキンケアにも通ずる『時間を軸とした美しさ』とそれを支える『習慣』から生まれる大和氏の作品をぜひ展覧会でお楽しみいただけたら幸いです。あなたの『美しさの定義』を確かめに、ぜひいらしてみてください。

【撮影協力】株式会社大林組

展覧会開催情報

ART PROJECT with P.G.C.D.
Respect the Artist
大和 美緒

「呼吸する星」

期間: 2023年1月14日(土)〜3月31日(金)まで
場所: JBIG meets art gallery
107-0062 東京都港区南青山 7-4-2 アトリウム青山
※完全予約制・入場無料
<ご予約はこちら> 

対談の前編はこちら▼

P.G.C.D.公式サイトはこちら▼

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