きれいを諦めない【健康的で自分らしい髪を維持するために】
オーガニックカラー専門店 Colorista(カラリスタ) 代表 宮口 博志×P.G.C.D.代表 野田 泰平[後編]
P.G.C.D.代表 野田 泰平と、オーガニックカラー専門店 Colorista(カラリスタ) 代表の宮口博志 氏の対談 後編です。
前編に引き続き、意外と知らない髪が染まる仕組みや、ヘアケアのポイントについて教えていただきました。
カラーへの熱狂的な愛
野田泰平(以下、野田)
前回から引き続き、Maison de P.G.C.D.のサロンルームに関連して、オーガニックカラー専門店 Colorista(カラリスタ)にお邪魔し、美容師でありオーナーの宮口博志さんにお話をお聞きします。
この「Colorista(カラリスタ)」という店名ですが、響きがとても素敵です。この名前にした由来をぜひ聞かせてください。
宮口博志(以下、宮口)
僕はサッカーが好きで、スペインのレアルマドリードが特に好きなんですが、その熱狂的なファンのことをマドリディスタと呼ぶんですね。バルセロナならバルセロニスタ。イメージしやすいもので言えば、最先端のファッションを目指すファッショニスタという言葉があります。
そういう、熱狂し突き詰めるニュアンスが素敵だなと思って、カラーが大好きな人たちという意味を込めて「Colorista(カラリスタ)」という名前にしました。
野田
素敵ですね。カラーが大好きでこだわる人たちのために作られた場所。熱狂的にカラーリングを愛している人たちの「髪を染めるという行為」について、後編でも学びを深めたいと考えています。
髪が染まる仕組み
髪の構造とカラーリングのプロセス
野田
髪が染まるというのは、具体的にどのような工程で、どこが染まっているのでしょうか?
宮口
図をもとに説明しますね。前編でお話したとおり、髪の毛は三層構造になっています。カラー剤には1剤、2剤という2種類の薬剤があり、それらを混ぜて染色をします。
①のカラー剤の散布前は、外側のキューティクルがうろこ状にピタッと貼り付いた状態です。このキューティクルを1剤で開くのが②の段階です。キューティクルをしっかり開いて、薬剤を浸透させなければいけません。
キューティクルの内側には▲で示されたメラニン色素があります。日本人は基本的にこのメラニン色素が多いため、髪の毛が黒い方が多い。欧米の方は少ないために明るく発色します。
このメラニン色素は、1剤と2剤が混ざり合うことにより脱色します。
野田
なるほど、③の時点で▲の色が黄色に変わっていますね。
宮口
③の段階で2剤によりメラニン色素が脱色され、キューティクルの内側に浸透した染料が発色します。ただ染料が入っただけだと流れ出てしまうのですが、ここで酸化染料の分子同士がくっつき合い大きくなります。そうすることで髪の毛の外へ染料が流れ出しにくくなり、髪の内部に色素が残って発色する。これが大まかなメカニズムです。
最終的に髪を乾かすとキューティクルが閉じて、さらに色が流出しづらくなり安定します。
野田
なるほど。色を抜く作業と入れる作業が髪の毛のなかで同時に行われているんですね。
宮口
そのとおりです。どちらかというと色を抜く工程が多くて、染める工程が短く、時間差で行われています。
オーガニック成分の比率が髪のダメージを左右する
野田
前回、オーガニックカラーの特徴として髪の手触りや匂いが違うとお話いただきましたが、髪を染めるプロセスにおいてオーガニックゆえの違いはあるのでしょうか?
宮口
基本的に髪を染める仕組みはまったく同じです。違いはカラー剤の成分を可能な限りオーガニック由来のものに変換しているかどうか。90から95パーセント近い成分をオーガニック由来に切り替えているカラー剤は、オーガニックカラーと言ってよいと思います。
野田
髪の中に染料が浸透するということは、体内に入れるような感覚に近いと思うのですが、オーガニックのほうが髪に優しいと考えて良いものでしょうか?
宮口
その認識で良いと思います。先ほどもお伝えしたように、髪も地肌も同じタンパク質で構成されているので、カラー剤の影響は髪にも地肌にもあると思います。
オーガニックだからといって100パーセント大丈夫というわけではないけれど、刺激も少なく地肌が荒れる方はだいぶ少ないですね。
野田
ケミカルかつ安価な商品のなかには高刺激なものも多いですよね。それと比較すればオーガニックは肌に優しいということですね。
宮口
絶対的に優しいですね。
野田
オーガニック剤により、髪がケアされることはあり得ますか?
宮口
ダメージケアはカラー剤よりも、日々のシャンプーとトリートメントが重要だと思います。髪の毛は基本的に、一度ダメージを受けると二度と回復できません。根本にいくほど髪の毛は健康的だと考えてください。
カラーはどちらかというと傷ませないことが大切。通常のアルカリカラー剤で1回染めた場合のダメージを50とすると、オーガニックなら3くらいに抑えられるようなイメージです。なるべくナチュラルな状態を目指して染めるから、繰り返し使ってもダメージの蓄積が少ないんですね。
野田
なるほど。染色によって髪の毛が受けるダメージを、可能な限り抑えられるのがオーガニックカラーの特徴ということですね。
ヘアケアのポイント
髪を守るためにはお湯での予洗い+シャンプーは少量で
野田
髪の毛を守り、カラーを保つためのケアについて教えてください。
宮口
大切なことは日頃の洗髪です。シャンプーもすればするほどダメージが残ります。日本の入浴習慣からすると1日1回は洗いますよね。工夫するとすればその洗い方でしょうか。
僕のオススメは、シャンプー剤の量を減らすこと。シャンプー前にお湯で汚れをしっかり落とす。その後、なるべく少量のシャンプーを使い、しっかり洗い流しましょう。シャンプー剤が地肌や髪の毛に残ることが一番良くないのです。
トリートメントも市販のものは油分が多いので、地肌にベタベタつけるのはNG。少量つけて、しっかり流すのが一番オススメの方法です。
野田
自分の大切な髪を長く大切にするために、日頃のケアをしっかりしてあげるのが大事なんですね。
宮口
そうですね。カラーは髪が痛むからしたくない、回数を控えようという気持ちにはなってほしくないなと思います。
きれいを諦めない
野田
肌や髪への考え方には、その人の美学・価値観が現れると思います。宮口さんが美容師を続けるなかで培われた美学、考えを聞きたいです。
宮口
美学というほど堅苦しいものではないですが、「きれいを諦めない」というのは僕が美容師を続ける上で持ち続けています。「こんな歳だから」と、やってみたいヘアスタイルやカラーを諦めてほしくないという思いです。
加齢によって変化するなかで、美しくあることを諦めてはいけません。続けやすく安心できる良いものを選べば、髪や地肌へのダメージを気にせず自分らしい美しさを保てるはず。この思いがColorista(カラリスタ)の始まりでした。今は2ヶ月に1回を月1回できるものを提供できるようになり、この美容室を開いた意味があったと感じています。
野田
ありがとうございます。「きれいを諦めない」。素敵な言葉ですね。美しさの価値観は人それぞれですから、素敵なグレーヘアの方も、ヘアカラーを楽しむカラリスタな方もいらっしゃる。
そのなかで、オーガニックカラーによる髪の質感の違いや、優しい香り。せっかく染めるならダメージをできるだけ抑えて負荷の少ないものを選ぶ。自分の髪を優しくケアしながら歩んでいく。お客様それぞれの生活のなかで、なにか選択するときにとても役に立つお話を聞くことができました。
今日は本当にありがとうございました。
執筆:ふじね まゆこ
【店舗情報】
Colorista(カラリスタ)
〒108-0072
東京都港区白金2-1-1パセオ三光坂208
https://colorista.jp/
前編はこちら▼
宮口氏 ✕ P.G.C.D.野田 他の対談記事はこちら▼
P.G.C.D.公式サイトはこちら▼