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過酷な環境にある足裏の知られざる現実とは?【ハイヒールが足裏の角質を厚くする要因?】

足育研究会 代表 皮膚科医 高山 かおる×P.G.C.D.代表 野田 泰平[パート1]

顔やひじ、かかとなどの皮膚を丁寧にケアしていても、足裏までしっかりとケアしている人はどれくらいいるでしょうか? 実は、足裏は体の中で唯一体重を支える特別な皮膚であり、同時にとても過酷な環境にさらされています。

今回から3回に渡り、足育(そくいく)研究会の代表で皮膚科医の高山かおる先生に、P.G.C.D.代表の野田泰平が足裏と健康についてお伺いしていきます。パート1となる今回は、足の構造や、フットウエアの悪影響などをお伝えします。

■対談参加者プロフィール
足育研究会 代表 皮膚科医
高山 かおる
1995年山形大学医学部卒業後、東京医科歯科大学皮膚科学教室で医学博士取得。2006年より東京医科歯科大学附属病院皮膚科にて、足のトラブルの原因を追究し根治をめざすためのフットケア外来を開設。2015年より済生会川口総合病院皮膚科の主任部長に就任。同病院にても足と爪のケア外来を開設し患者の治療にあたる。また足の大切さを社会に知ってもらう目的で一般社団法人足育研究会を組織し、啓発活動を行っている。

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株式会社 ペー・ジェー・セー・デー・ジャパン
代表取締役CEO
野田 泰平
1979年福岡県生まれ。2010年に株式会社P.G.C.D. JAPANを設立。「年齢を美しさに変える人」を増やすため、スキンケア・スカルプケアの商品を開発、販売。また、2019年にはホールディングス会社である株式会社JBI GROUPを設立。企業理念『Pay forward』を掲げ、“世界を幸せにする人を増やす”という使命のもと、サスティナブルな商品、サスティナブルな事業を創造し、社会と未来に貢献する。

足裏の皮膚は特別。身体を支えるために厚い角質がある

野田泰平(以下、野田)
Maison de P.G.C.D.のサロンルームからお送りします。今回は足育(そくいく)研究会の代表である皮膚科医の高山かおる先生に来ていただきました。

高山かおる(以下、高山)
よろしくお願いします。

野田
今回の対談はとても楽しみにしていました。顔も頭皮も皮膚ですが、それぞれ適した環境が違う。特に足は、毎日歩くときに使っていて、生きるというテーマに直結していると感じています。

足裏の皮膚にはとても興味があるのですが、詳しく書かれている本や資料が少ないですよね。そのため、今日は先生からしっかりと教えていただきたいと考えています。早速ですが、足の裏の皮膚が、顔や頭の皮膚ともっとも違う点はどこですか?

高山
皮膚の構造自体が違っており、角質が分厚いという特徴があります。足の裏で身体を支えられるように、顔の皮膚より何倍も厚い角質ができるようになっています。
 
さらに、メラニンがなく、どんな人種でも白いですね。毛が生えず、毛穴もありません。皮脂腺は毛穴とセットですから、脂の線はなく、汗をかくための汗腺はたくさんあります。皮脂のバリアは、汗と皮脂で混ざり合って皮脂膜を作るのですが、足の裏にはないんです。

身体を支える圧力だけでなく、フットウエアや血の巡りから見ても過酷な環境

野田
肌は汗や皮脂によって自らの環境を整える機能があると思っています。足裏の場合、汗はどのように働いているのですか?

高山
足裏は角質が厚く、溝が深いので、グリップ力を持っています。汗をかくと、さらにグリップ力が高まる。ただ、いずれにしても過酷な環境にあり、他の場所より大変な皮膚なのです。

野田
足裏の環境がどのように過酷なのか、もう少し詳しく教えていただけますか。

高山
体重がかかるのが第一です。足にタコができるのは、過酷な証拠。過剰な圧力がかかり続けた結果、タコという形で表れる。これは、当たり前のように思われがちですが、正常な状態ではありません。炎症が起きて、それに対抗するために角質が増殖していますから。

野田
外部の圧力から守るためにも、皮膚が硬くなる必要があるんですね。

高山
また、常に適切な量の汗が分泌されるわけではなく、さらに靴や靴下などのフットウエアが介在するので、足にとって最適な環境になりにくい。身体の末端にあり、心臓から一番遠いため、血液の流れも、最も悪いと考えていただいてよいと思います。

野田
血液が行き届かないのでしょうか。

高山
顔などと比べると、代謝の良さは雲泥の差。血液が巡りにくく、よどんでいるイメージです。

野田
靴や靴下は、足にとってポジティブな影響があると思ったのですが、逆に過酷な環境を作り出しているのですか?

高山
例えば、女性のストッキングは、靴の中で滑ります。パンプスやハイヒールもきつくて、履きやすいものではないですよね。また、女性に限らず、安全靴なども足のトラブルのもとです。硬いもので覆われると、足は過酷な環境に追い込まれます。

野田
ハイヒールを履く女性は、圧力がかかりそうな先端部分だけでなく、かかとまで硬くなる印象があるのですが、どうしてなんでしょうか?

高山
ハイヒールは指先をあまり使えない形をしています。指を動かさないと、血液の循環が滞ります。スポーツなどで踏み込むときにも圧力がかかりますが、その際には足のばねを使っています。圧力のかかる指の付け根部分も、動きの中で一瞬通り抜けるだけなので、基本的にタコにはなりません。

 歩く時も基本的には同じはずですが、ハイヒールを履いていると、足の指の付け根のところにずっと体重がかかり続けます。それは、かかとも同様です。指を使いにくいことで、体重が分散されず同じ場所が当たり続けて擦れる。硬く当たるものに対抗するために皮膚を硬くしようと、角質を作ろうとするのですね。

 皮膚の新陳代謝がわるく角質が厚くなれば、天然保湿因子はより枯渇してきます。何もしなければ乾燥して、かかとがカサカサになってしまいます。

野田
普通に歩いていれば一瞬で通り過ぎる場所が、ずっと当たり続けているということなんですね。

高山
一歩につき、足には体重の約1.2倍の圧力がかかると言われています。体重が60kgなら、72kgほどの圧力がかかる。毎日足にかかる圧力を緩和しているのが、足のアーチの形です。アーチが跳ねるように働き、力を逃がしている。だから、何千、何万と歩けるし、マラソンなどもできるようになるのです。

一方で、ハイヒールのパンプスを履くと足のアーチが使えません。ずっと体重の1.2倍の圧力がかかり続けます。

だから本来、歩く時には歩きやすい靴を履き、ここぞというときに履き替える習慣があればいい。ニューヨーカーはスニーカーで通勤し、会社で誰かに合うときにハイヒールを履きますよね。ところが、日本ではハイヒールで通勤して、オフィスではサンダルを履いています。実は、サンダルも足との適合性がわるく、足の指が使えないので、足にとっていい履物とはいえないんです。

野田
サンダルはフラットすぎるからですか?

高山
どちらかというと、ゆるいことが理由です。アーチはある程度締めないと働かないのです。

野田
なるほど! では、裸足よりもアーチを支えてくれる靴のほうがいいのでしょうか。

高山
ポジティブなフットウエアであれば、そうです。

野田
裸足が一番いい、というわけではないのですね。

高山
足の裏の皮膚は当然温度など察して危険を察知して脳につたえていますが、それ以外にも足裏は感覚受容器とも呼ばれており、体のバランスをとったり、地球の上に立って活動するうえで、足裏が貴重なセンサーになっています。

そういう意味で、裸足で歩く感覚は持っていたほうがいい。子どものころに、いろいろなものの上に載ったり、砂の上やデコボコ道を歩くのは、足裏の感覚を育てるという意味で大切な経験です。ただ、ずっと裸足でいるからといって健康になるわけではないんですよ。


足の環境や足裏の構造について、驚きの事実がたくさん明らかになりました。ハイヒールがよくないと感覚ではわかっていても、ここまでとは……。普段歩くときにはスニーカーを履くなど、工夫する必要がありそうです。

次回は、健康寿命を長くするための方法を教えていただきます。一日に歩く目標値や、歩き方など、今すぐに取り入れたい内容になりそうです。

執筆:栃尾 江美

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