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人生のラスト10年を元気に過ごすために【認知症や要介護のリスクを減らすには「歩く」が有効】

足育研究会 代表 皮膚科医 高山 かおる×P.G.C.D.代表 野田 泰平[パート2]

足育(そくいく)研究会代表であり、皮膚科医の高山かおる先生をお招きして、パート2では足の環境の過酷さや、足裏のケアをご紹介しました。さらに、足の重要性がわかるのが「ラスト10年問題」。足を含めた身体の健康を保ち、日々歩くことが認知症や要介護の予防につながるのだそう。詳しくお伺いしていきましょう。(前回のパート1はこちら

■対談参加者プロフィール
足育研究会 代表 皮膚科医
高山 かおる
1995年山形大学医学部卒業後、東京医科歯科大学皮膚科学教室で医学博士取得。2006年より東京医科歯科大学附属病院皮膚科にて、足のトラブルの原因を追究し根治をめざすためのフットケア外来を開設。2015年より済生会川口総合病院皮膚科の主任部長に就任。同病院にても足と爪のケア外来を開設し患者の治療にあたる。また足の大切さを社会に知ってもらう目的で一般社団法人足育研究会を組織し、啓発活動を行っている。

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株式会社 ペー・ジェー・セー・デー・ジャパン
代表取締役CEO
野田 泰平
1979年福岡県生まれ。2010年に株式会社P.G.C.D. JAPANを設立。「年齢を美しさに変える人」を増やすため、スキンケア・スカルプケアの商品を開発、販売。また、2019年にはホールディングス会社である株式会社JBI GROUPを設立。企業理念『Pay forward』を掲げ、“世界を幸せにする人を増やす”という使命のもと、サスティナブルな商品、サスティナブルな事業を創造し、社会と未来に貢献する。

健康寿命とは? 膝と腰が要介護の入り口

野田泰平(以下、野田)
足育(そくいく)研究会の高山かおる先生、引き続きよろしくお願いいたします。
前半は足の皮膚の話でしたが、ここからは「人生ラスト10年問題」に対抗する足の役割を教えていただければと思っています。

高山かおる(以下、高山)
日本人は健康寿命も平均寿命も世界一長いのですが、その間にどれくらいの差があるかご存じでしょうか。

野田
何の不自由もなく介護を受けていない状態から、その後、介護を受けながら生きて、お亡くなりになるという流れだとすると、20年くらい……でしょうか。

高山
20年まではいきませんが、10年くらいあります。だから「ラスト10年問題」なんですね。
女性が12~13年、男性が8年くらいです。その間は何らかの介護を要する状態となります、医療費や介護費用はうなぎ上りで、日本経済を圧迫する要因になっています。国としては、この年齢差をなんとか下げたい。地域の対策としてもさまざまな健康事業に取り組んでいますが、平均寿命も延びるので、対策を講じて6年ほど経っても、2~3ヶ月しか縮まっていません。

健康寿命を脅かす病気は、ほぼ「生活習慣病」と考えていただいて差し支えないでしょう。その中で、「膝が痛い」「腰が痛い」という問題がもっとも深刻です。ロコモティブシンドロームと呼びますが、元気な時は「自分がどのように年を取っていくか」をあまり想像できないためか、そのキーワードでピンとくる人はほとんどいません。

野田
確かに、あまりいないですね。移動するための能力(ロコモティブ)が衰える状態ですよね。

高山
はい。ロコモティブシンドロームは深刻です。要支援になった原因のうち最も多いのは、膝や腰といった運動器の障害です(※「骨折・転倒」「関節疾患」「高齢による衰弱」を「運動器の障害」としてまとめた場合)。

野田
膝と腰が要介護の入り口なんですね。

歩けなくなると社会性を失い、食べなくなる、という悪循環

高山
腰や膝が痛くなると、歩きたくないので家から出なくなってしまいます。出歩かなくなると何が起こるか。社会性を欠き、人と話さなくなっていきます。その結果、認知症になりやすくなります。ご存じのとおり、認知症は要介護者の約2割を占めています。

野田
なるほど。膝や腰といった運動器の障害から始まっているのですね。

高山
そうなんです。歩けなくなると社会性を失い元気がなくなり、食べられなくなります。食べられなくなると口の機能が弱まり、会話が難しくなって認知機能が落ちていく、という悪循環。筋肉量が著しく落ちると、サルコペニア型という動けない体になり、寝たきりになるリスクが高まります。でも、誰も寝たきりにはなりたくないですよね。

野田
そうですね。

高山
一番いいのは通称「ピンコロ型」です。
ついこの間まで自分のことはできていた高齢者が、ある時起きてこなくなり、眠る時間が長くなって、安らかに最後を迎えるといったケース。
ピンコロ型の増加が人生のウェルビーイングや、社会全体の活性化につながると思います。

そのために、歩き続けることが大切。ハイヒールが好きな方も、身体を痛めないように靴を選ぶ必要があるでしょう。

野田
すべて繋がっているのですね。ラスト10年問題を考えるもっと手前から考える必要があるのですね。

高山
子どもの頃からも、運動や歩く習慣などが必要なのだと思います。

介護予防の対策は、「食べる」「人と話す」「歩く」の3つ

高山
要介護状態の発生をできる限り遅らせる目的で、厚生労働省でも介護予防が考えられています。いろいろな施策が講じられており、それらを鑑みて「食べる」「人と話す」「歩く」の3つが大切だと考えています。

食べることは、おそらく想像がつくのではないでしょうか。嚥下機能を使って、咀嚼して噛むことで、栄養をきちんと摂取できます。また、人と話して社会性を保つことも、介護予防に繋がります。

もうひとつが、「歩く」ことです。運動機能を保つという意味で謳われていますが、毎日どのくらい歩けば、ラスト10年問題に打ち勝てると思いますか?

野田
よく、「一万歩」みたいな話がありますが、歩数で考えればいいのでしょうか?

高山
そうですね。ウォーキングの場合、5000歩から8000歩です。一般的な方なら、10分で1000歩くらいなので、50~80分くらいだと考えてください。ただ、だらだら歩いていてもだめなんです。

野田
聞いたことがあります。量じゃなくて心拍数が大事だとか?

高山
そうなんです。5000歩から8000歩を、ときどき息が切れるほどのスピードで歩いてもらいたいんです。早歩きすると、運動機能の向上につながり、ロコモティブシンドロームの予防になります。

当然ですが、たくさん歩けば生活習慣病、つまり糖尿病や高血圧症や心臓の病気の予防になります。また、たくさん運動する人に認知症が少ないというデータもあり、運動のひとつとして、歩行でも同様のことが言えます。

講演会などで尋ねると、1日3000歩も歩いていない人が結構多い。地方より、東京の方のほうがよく歩いています。

野田
そうなんですか。逆だと思っていました。

高山
都会の人は電車に乗るのでよく歩いていますが、車社会だと歩かなくなっていきます。現代社会はとても便利なので、わざわざ歩かなくても事足りる。多くの人は、歩く機会を見つけたり、わざわざ運動したりしないと健康が保てません。

野田
でも、急に歩こうと思ってもストレスになるかもしれませんね。歩く習慣も、若いころから持っていないと難しいのではないでしょうか。

高山
運動も同じですよね。これまでスポーツをしてこなかった人に、いきなり「運動してください」と言っても難しい。やはり子どもの頃から運動習慣を持っていただきたいですが、子どもの運動時間が減っていて、運動能力も下がっており、これからさらに悪くなると考えられます。今のご高齢の方たちは、戦争を体験した方もいて、根本的な筋肉が強かったりするので割と丈夫です。今の子どもたちや若い方が大きくなった時は心配ですね。

野田
やはり、それだけ、歩くという行為は大切で、自分の死に方まで決めてしまうんですね。歩く習慣の大切さがわかりました。


ラスト10年問題に大きくかかわる「歩く」習慣。のんびりと歩くのではなく、早いペースでの歩行が必要です。死ぬ間際まで元気でいるために、いまからウォーキングの習慣を付けたいですね。

執筆:栃尾 江美

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