生活習慣病の予防は歯のケアから。子どもの虫歯も気を付けて!【メタボリックドミノの上流からストップ】
医療法人社団 千寿会 理事長 本間 輝章×P.G.C.D.代表 野田 泰平[後編]
歯の仕組みや口の中のケア、唾液について、「もっと早く知りたかった!」という情報が盛りだくさんの本対談。今回も本間輝明先生をお招きして、夜寝る前のケアや生活習慣病との関係、子どもの虫歯の予防など、気になるトピックについて伺いました。
歯を強くするのも虫歯にするのも夜の時間がキーに!
前回は唾液の話が中心
野田泰平(以下、野田)
Maison de P.G.C.D.のサロンルームからお送りしています。医療法人社団千寿会理事長である本間先生との対談も2回目となりました。前回は、唾液の役割などを中心にお伺いしていきましたが、ランチ後のデザートが口の中に及ぼす影響は衝撃的でした。
今回はまず、寝る前のお口のケアから伺っていきたいと考えています。
寝ている間の口腔ケアにひと工夫
野田
寝ている間の口内環境のために、寝る前のケアとして大事なことは何でしょうか?
本間輝章(以下、本間)
昼間なら水やお茶を飲んだりして、口の中を少しずつケアできますが、寝ている間は長い時間、何もできません。寝る前に、食べかすなどをできるだけ残さないようにしたいところです。
1日3回の歯みがきをする方でも、夜だけはデンタルフロスや歯間ブラシなどを使って、普段届いていないところもきれいにしたほうがいいですね。
野田
前回教えていただいた唾液の話では、緊張しているときのネバネバ唾液と、リラックスしているときのサラサラ唾液があるとおっしゃっていました。また、サラサラ唾液には歯の再石灰化の効能もあるとか。そう考えると、寝ている間もできるだけサラサラの唾液がいいのでしょうか。
本間
そうですね。唾液がお口の中を循環する環境を作りましょう。歯ぎしりや食いしばるかたはマウスピースをすると、異物が入ることで唾液が出る効果が期待できます。
サラサラ唾液のためにはリラックスしている必要があります。眠る直前までスマートフォンを見ていると睡眠スコアが下がる傾向があるので、やめたほうがいいでしょう。また、飲酒をすると脱水症状が進むので、ネバネバ唾液になりやすいのです。身体に水分量がある状態で寝れば、唾液が出て口の中を整えてくれます。
唾液が出にくい方は、下顎の裏側や耳の下などにある唾液腺をマッサージすると効果的です。梅干しなどすっぱいものを見たときに痛くなる場所が、唾液の出る穴があるところ。寝る前にその周りをマッサージして唾液を出すのは、夜の習慣としていいですね。
野田
確かに、今こうしてマッサージするだけで口の中が潤ってきました。
生活習慣病を進めないために。まずは虫歯や歯周病を食い止めよう
野田
夜の間に口内が乾燥していると、菌が繁殖して歯や歯茎の病気に繋がり、それがさらに日中の緊張状態を引き起こしてしまったりする。口の中の健康が、身体に与える影響は大きいのでしょうね。
本間
歯周病の菌は毒素を出していて、血管の中に入って全身を巡っていきます。血液の中にばい菌がどんどん蓄積されて、血管を細め、高血圧を起こすこともあるのです。
メタボリックドミノという、生活習慣病は最初の1個を倒すとドミノのように崩れていくという考え方があります。最後まで倒れると死に直結しますから、最初のドミノを倒さないようにしなくてはなりません。
死に至る手前に、糖尿病や脂肪肝、高コレステロール血症、肥満など、何らかの診断がそのもっと手前に、歯周病や虫歯(う蝕)などの歯の状態があるのです。
歯周病があり、ばい菌が血液に入ると、インスリンの効きが悪くなります。その結果、高血糖になって糖尿病を患う場合も。糖尿病は歯周病を進行させますから、悪いスパイラルに陥ってしまいます。
だから、初期の段階で止める必要があるんです。お口は体の入り口でもありますから、健康な状態が不可欠なんですね。
野田
お口の不健康が、人生を狂わせ、寿命を縮める状況を作ってしまうんですね。驚きです。
乳歯の段階で虫歯が多いと、将来も弱い傾向に
子どもの虫歯
野田
お子さまがいらっしゃる方は、子どもの歯みがきも気になると思います。子どものケアで気を付けることはありますか?
本間
前回、赤ちゃんの唾液はサラサラでピュアな状態だとお話しました。実は、それを壊すのが親なんです。
野田
どういうことですか?
本間
ママが噛んで柔らかくしたものを「あーん」とあげてしまうと、親の持つ虫歯菌が子どもに感染します。だから最近は「口移しはやめましょう」と言われていますね。
一生無菌で過ごすのは難しいものの、子どものころに口移しをしておらず、大人の歯が生えてきた時に歯みがきをしっかしているお子さんは、将来も虫歯になるリスクがガクンと減ります。
野田
では、乳歯の時に虫歯が多いと、その後も歯が弱くなるのですね。
本間
そういう傾向にあります。地域にもよりますが、私が検診している学校では、小学校低学年くらいまでなら虫歯が多くありません。ところが、4~5年生になると増えてきます。塾などで間食が増えて、外出中だと歯みがきもしないから、虫歯になるリスクが上がるのでしょう。
永久歯が生えたばかりのころは、歯として生まれたばかりなので弱い傾向にあります。唾液に含まれるペリクルという成分は、歯の表面をコーティングしてつやを出す効能がある。生えたばかりの永久歯はまだゴツゴツしていますが、唾液のカルシウムやリン酸が再石灰を促し、ペリクルで何層にもコーティングして、きれいに、強くしてくれます。
6歳のころに六歳臼歯が奥歯として生えてきますが、最初はまだ強くないわけです。これを虫歯にしないように歯みがきや歯科医院のメンテナンスをしっかりしている子どもは、将来的にも歯を守っていけるパターンが多いようです。
野田
乳歯の虫歯や、永久歯が生えたばかりの虫歯がその後に関わってくるのですね。乳歯のときや、塾に行くなど間食が多くなるタイミングで、しっかりと丁寧なケアがポイントですね。
おばあちゃん子、部活のスポーツドリンクも注意
本間
他に、「おじいちゃん子」「おばあちゃん子」も虫歯が多いんです。おじいちゃんやおばあちゃんが、よくお菓子をあげるから。また、下に兄弟がいると、下の子の手間がかかるときに、静かにしてもらいたくてお菓子をあげるケースが多いんですよ。
寝かしつけが大変だからと、寝る前にお菓子や甘い飲み物を与えている方も要注意です。寝る前に水分補給のためにスポーツドリンクを飲ませる方もいますが、寝ている間ずっと口の中に停滞しているので、一気に虫歯が増えてしまいます。
野田
それは、知らない人が多いのではないでしょうか。健康のために与えている人も多そうですね。
本間
中高生のスポーツドリンクも気を付けたいですね。アメリカでは、飲んだ後に必ず水を飲ませます。スポーツドリンクは酸性なので、口の中に残ったままでハアハアと口呼吸をしていると、あっという間に虫歯になります。
野田
甘いものをやめるのではなく、食べてもすぐに歯みがきをする。子どもにスポーツドリンクを飲ませても、すぐにお茶や水を飲ませる。そんな風に正しい情報を知っていれば、虫歯は予防できるんですね。
まだまだ聞いていたいほど勉強になりました。ありがとうございました。
執筆:栃尾 江美
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